4月24日に開催されたシトリックス・システムズ・ジャパンとシスコシステムズの共催セミナーで、シトリックスはクラウドサービス環境において「Citrix NetScaler」シリーズが果たすべき、新たな役割について語った。
アプリのクラウド化でネットワークはどう変わるべきか
シトリックス システムエンジニアリング本部 ネットワーク クラウド事業部の犬塚昌利氏は、「NetScalerがサービス集約とマルチテナントで切り開くSDN最前線」と題した講演で、クラウド化やSDN化の流れにNetScalerがどう対応しているのかを説明した。
シトリックスでは、アプリケーション仮想化の「XenApp」、デスクトップ仮想化(VDI)の「XenDesktop」、サーバ仮想化の「XenServer」といったソリューション群を提供しているが、サーバー/データセンターセントリックなサービスの利用においてはネットワークのコントロールも重要になる。そこで同社は2005年にネットスケーラーを買収し、NetScalerをポートフォリオに統合している。
さて、企業業務システムのクラウド化(パブリック、プライベートの両方を含む)は着実に進んでおり、その利用もオフィス内のPCだけでなくモバイルPC、スマートデバイスなどに広がっている。こうした変化によって、ネットワークには「サービスデリバリ」の視点が求められるようになっていると、犬塚氏は分析する。
「クラウドはまず、データセンターから特定の拠点にアプリケーションを配信する『アプリケーションデリバリ』からスタートした。しかし現在では、データセンター~エンドユーザー間のネットワーク(モバイルを含む)まできちんとサービスを保証して届ける『サービスデリバリー』という感覚に変わってきている」(犬塚氏)
仮想化/クラウド環境に適したネットワーク環境を構築するため、注目を集めているのがSDN(Software-Defined Network)分野だ。現在はレイヤー2~3部分が話題の中心になっているが、「次のステップとしてポイントとなってくるのが、その上の(レイヤーの)アプリケーションネットワークサービス部分」だと犬塚氏は述べた。
「下の(L2-3の)部分はSDNで柔軟になっていく。そして上の部分、ネットワークとアプリケーションの中間をブリッジするレイヤーで、(ネットワークとアプリケーションの)両方の状態をきちんとつかんだうえでネットワークを構成するのがポイントになる」(犬塚氏)
シトリックスは、いわゆる“(L2-3の)SDN製品”を扱うベンダーではない。だが前述のコンセプトから、今後はNetScalerがSDN領域においても重要な役割を果たすと考えている。事実、同社は、オープンソースのSDNプラットフォーム開発を目指す「OpenDaylight Project」にも、シスコやジュニパー、ブロケードなどと並びプラチナスポンサーとして参加している。
「3種類のプラットフォーム」×「3種類のスケール方式」
もともとロードバランシングやキャッシュ、TCPマルチプレクシングといったADC機能を提供してきたNetScalerだが、現在ではWAFなどのセキュリティ機能、モバイル対応機能、アプリケーショントラフィックの可視化機能なども統合している。
加えて、NetScalerでは「3種類のプラットフォーム」と「3種類のスケール方式」を提供している。プラットフォームは物理アプライアンスと仮想アプライアンス、そして最大80のインスタンスを1台に集約する物理アプライアンス(NetScaler SDX)がある。またスケールについては、ライセンス購入によるスケールアップ(Pay-As-You-Grow)、最大32ノードのクラスタリングによるスケールアウト、そしてSDXによるスケールイン(仮想化集約)である。この特徴により、利用者の用途に応じた柔軟で効率的な展開が可能になっている。
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