海外のデザイン系ブログなどで、HDR合成を使った派手な写真を見かけることが増えた。「HDR」とは、High Dynamic Range imagingの略で、露出オーバーで明るいところが白くなってしまったり(白とび)、露出が不足で暗いところがつぶれて(黒つぶれ)しまったりした写真を合成し、肉眼に近い画像を作成する技法のことだ。
白とびが発生する限界の露出値と、黒つぶれが発生する限界の露出値の幅をダイナミックレンジという。HDRは、黒つぶれ写真と白飛び写真を、通常のダイナミックレンジより広いダイナミックレンジで合成する。
具体的には、カメラの機能を使って撮影時に合成する方法と、撮影後にPhotoshopやPaintShopなどソフトウェアで合成する方法がある。最近のデジタルカメラには標準で「HDRモード」が搭載されているほか、iPhoneのようなスマートフォンも標準で対応している。
HDRは本来、幅広いダイナミックレンジを表現するための手法だが、スーパーリアリズム系のCGのような見た目に加工するための手法として使われることも多い。HDR合成は、異なる露出の写真を合成するとき、重なった部分をぼかして双方をなじませる。なじませるためにぼかした部分とぼかしていない部分を重ねたり、ぼかした部分の輪郭に色をつけたり、コントラストを強調したりすると、絵画風やジオラマ(ミニチュア)風などと呼ばれる画像になる。
Photoshop CCでは1枚の写真でもHDR風の画像に補正できる「HDRトーン」がある。下の写真は、左の暗い写真を、Photoshop CCの「HDRイメージ」の、「トーンとディテール」でガンマ、露光量、ディテールを調整した。「ガンマ」は設定値が小さいと中間調が強調され、大きいとハイライトやシャドウが強調され、「露光量」は数値が大きいと画像全体が明るく、小さいと暗くなる。「ディテール」はシャープを調整する。
HDRの撮影では、被写体が動いていたり、カメラを手持ちしていたりすると、ぶれてしまい、合成した画像にもズレが生じるため、三脚を使って撮影する必要がある。Photoshop CCでは、合成前に「ソース画像を自動的に配置する」を設定しておくと、画像に多少のズレがあっても、適宜、補正される。