法人需要—iPadに対して明確な強みを発揮できる領域
実は、Windows 8.1の成否を占うひとつの鍵が、法人需要をどれだけ喚起できるかという点である。
PC出荷の約6割は法人需要。単純計算で同様の比率の法人需要が見込めるともいえる。
タブレット市場で先行するiPadは、業務で利用する既存アプリケーションとの連動や、企業が求めるセキュリティレベルの実現において課題があるのに対して、Windows 8.1ではそれらを克服できる提案を可能としているのが特徴。つまり、iPadに対して、明確な強みを発揮できる領域のひとつが法人需要ということになる。
だが、Windows 8.1を採用する企業の動きは、残念ながら今のところは鈍い。
大手PCメーカーに聞くと、現時点でもWindows 7の環境で新たなPCを導入する企業の比率が、PC出荷量全体の6〜7割に達しているという声があがる。来年4月に迫ったWindows XPのサポート終了を前にした駆け込み型のリプレース需要でも、Windows 8.1ではなく、Windows 7が導入の中心になると見られているのだ。
米企業は「Windows 9」がターゲット?
米ガートナーのリサーチ部門バイスプレジデント兼最上級アナリストのケン・デュレイニー氏は、「多くの企業ユーザーは、Windows 8を飛ばして、2016年にも登場するであろうWindows 9に行こうとしている。我々の予測によると、エンタープライズユーザーの90%が、Windows 8およびWindows 8.1をパスすることになるだろう」とコメントする。
その理由を次のように語る。
「Windows 8.1では、デスクトップUIとモダンUIを交互に移動しなくてはならないこと、新たなインターフェースに対応した業務アプリケーションが見当たらず、オラクルやシーベルがこのインターフェースに対応するには時間がかかること、またWindows RTは既存のアプリが動作しないといったことも課題となっている。こうしたことが、企業ユーザーがWindows 9まで待つ理由になる」と語る。
機能訴求の遅れ
昨年のWindows 8は、コンシューマ/法人ユーザーに対する機能訴求の遅れが出足の鈍さにつながった。
そして、今回のWindows 8.1でもその問題が解決されているかというと、決してそうはいえない。特に、切り札であるはずの法人向けの数々の新機能の訴求に遅れているといわざるを得ない。
コンシューマ/法人需要喚起に向けた課題は多いが、まずは法人向けに数多くの機能が強化されていることを最も訴える必要がある。
それがひいては、Windows 8.1の成功につながるのではないだろうか。
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