Appleが「iPhone 5s」「iPhone 5c」の2機種を発表した。世界的に見れば、Androidにシェアを奪われているとはいえ、トレンドセッターとしてのAppleの存在感は誰もが認めるところだろう。今回は中国など途上国を狙った廉価版登場が期待されたが、iPhone 5cの中国の価格は4488元。日本円にして約7万3000円である。Appleの中国戦略はどうなっているのか?
中国市場ではシェアを落とすも
期待されていたようには安くはなかった「iPhone 5c」
中国は世界最大のスマートフォン市場だ。Canalysによると、2013年第2四半期の中国スマートフォン市場の成長率は前年同期比108%増の8810万台。なんと、中国だけで世界全体の3分の1以上に達している。
最大手はSamsungでシェアは2割近く、2位はLenovo、以下Huawei TechnologiesやZTEといった地元メーカーが続いている。当然、主役はAndroidで、中国で出荷されるスマートフォンの8~9割といわれている。このようなAndroid優勢市場において、Appleのシェアは7番手の5%。前年同期の9%からシェアを落としており、実際Appleの業績を見ても、中国市場の売上はマイナス成長となっている。
言うまでもないことだが、スマートフォン市場が拡大する中でミッドレンジ、ローエンドの端末が重要になっている。中国市場は巨大だが、ハイエンドからフィチャーフォンまで守備範囲が広く、多数の機種を揃えるSamsung、地元ブランドの強みを生かし比較的低価格なスマートフォンを投入するLenovoやHuawei、低価格だが高スペックで若者に受け入れられているXiaomiやCoolpadなどの新興メーカーがひしめく市場だ。ここでAppleの次の手として期待されていたのが廉価版だ。
いざベールを脱いだiPhone 5cは、安価なスマートフォンではなかった。たとえば、Xiaomiが前の週に発表した最新機種「Xiaomi Mi3」は1999元(約3万2000円)で、フルHDのIPS液晶、13メガピクセルのメインカメラ、クアッドコアプロセッサ(TD-SCDMA版は1.8GHzのTegra4、WCDMA版は2.3GHzのSnapdragon 800)、RAM 2GB、ストレージ16GBまたは64GB、3050mAhのバッテリなどのスペックを持つ。
倍以上の金額を払って、iPhone 5と(色以外は)ほとんどかわらないiPhone 5cを買う意味はどこにあるのかとなりそうだ。なお、iPhone 5sは5280元(約8万5000円)、5sと5cの差はわずか800元(約1万3000円)だ。なお、中国の価格には付加価値税17%が含まれている。また、中国ではキャリアによる端末への販売奨励金は一般的でない。
このようなことから、Appleの中国(および途上国)戦略は価格ではないといってよいだろう。iSuppliはiPhone 5cの製造原価を165ドルと推定しており、iPhone 5cの利益率は約35%といわれている。スマホ市場が変わろうと、収益性は犠牲にできないということのようだ。
この連載の記事
-
第340回
スマホ
対米関係悪化後も米国のトップ大学や研究機関に支援を続けるファーウェイの巧みな戦略 -
第339回
スマホ
ビールのハイネケンが“退屈”な折りたたみケータイを提供 Z世代のレトロブームでケータイが人気になる!? -
第338回
スマホ
ファーウェイはクラウドとスマホが好調で大幅利益増と中国国内で復活の状況 -
第337回
スマホ
米司法省、アップルを独禁法違反の疑いで提訴 その中身を整理する -
第336回
スマホ
Nokiaブランドのスマホは今後も出される! バービーとのコラボケータイ、モジュール型などに拡大するHMD -
第335回
スマホ
ファーウェイスマホが中国で好調、次期HarmonyOSではAndroid互換がなくなる!? -
第334回
スマホ
Nokiaのスマホはどうなる!? HMD Globalが自社ブランドのスマホを展開か -
第333回
スマホ
アップルがApp Storeで外部決済サービスを利用可能に ただし手数料は27% -
第332回
スマホ
米国で特許侵害クロ判定で一時は米国で販売停止のApple Watch、修正は認められるか? -
第331回
スマホ
2023年は世界で5Gが主役になった年 世界の5G契約数は16億に -
第330回
スマホ
iMessageが使えるAndroidアプリが作られ、すぐ遮断 そしてRCS対応 吹き出しの色を巡る攻防 - この連載の一覧へ