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『とある科学の超電磁砲S<レールガン>』BD発売記念企画! 第3回

鹿野司氏発案! 劇中通り14日間で完成するお姉様量産計画

"超電磁砲"御坂美琴のクローンを3Dプリンターで作る!?

2013年10月11日 18時00分更新

文● 林 佑樹

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(C)鎌池和馬/冬川基/アスキー・メディアワークス/PROJECT-RAILGUN S

美琴お姉様のカンペキなクローンが3Dプリンターで!?

鹿野 「細胞を“インク”にして印刷しちゃえばいいんです。実際、すでに3Dプリンターで臓器を作ろうという研究もあるんですよ。もちろん、まだ技術的な問題は山積みですが。

 人間の細胞はおよそ100兆個で、その種類は250種くらいなんですね。ですから御坂美琴の体細胞から作ったiPS細胞をもとに、250種の体細胞を作って培養し、御坂美琴の体の細胞レベルの3Dスキャン・データをもとにプリントするわけです。簡単だね(笑)。まあ、今の技術ではいくつか大きな壁がありますが、技術を磨けば原理的には不可能ではない」

―― 3Dプリントするということは、元の……美琴お姉様をまずスキャンする必要があるわけですの?

鹿野 「そうです。ただし、全身の100兆の細胞を、3次元空間のどこにどの細胞があるかまで、厳密に情報化しないといけない。この情報に基づいてプリントされた御坂美琴は、クローンではなく、性格や記憶もスキャン時のまま写し取った、カンペキなコピー人間です」

―― 記憶や人生経験などはすべて脳にありますものね。

スキャン精度と250種類の細胞を作り分けることができれば、3Dプリンターで人間ごとコピーすることも可能になる!?

鹿野 「そうですね。ただ現在の人体のスキャン装置は、MRIでもX線CTでも1ボクセルが数立方ミリの分解能ですから、その1000分の1の大きさの細胞レベルで見分けられるスキャン技術をどうするかが1つの壁ですね。

 それともちろん、iPS細胞からすべての種類の細胞が作れるようになる必要もあります。これは今のところ、ヒトではまだ数種類かな。できた細胞の培養、つまりインク作りも大変だろうけど、これは簡単な工夫でなんとかなるでしょう」

―― 仮にその2つが実現したとして、何日でコピー人間ができるんですの?

鹿野 「仰向けになった人間の厚みが20cmとして、細胞が1ミクロン平均だから、20万層あるとします。劇中通りに14日間で作るなら毎秒4層ずつプリントしていけば、御坂美琴のコピーが作れます」

現代科学に沿って考察したところ、試験管ベビー型ではなく3Dプリンターで、しかもクローンどころか完璧なコピー人間が製造可能という結論に (C)鎌池和馬/冬川基/アスキー・メディアワークス/PROJECT-RAILGUN S

―― 鹿野さま、すごいですの!

鹿野 「あり得ないと見捨てるんじゃなくて、どうすればできるのかと考えるのが好きなんです。作家さんの考えたクリエイティブなイメージを、『こういう方法ならできるでしょ?』って示すのがSF考証のお仕事ですしね(笑)」

―― そういえば劇中では、妹達(シスターズ)の製造単価は1体18万円と説明されてましたが、ここまで安価になるものなんですの?

鹿野 「まあ、お肉の値段にすると、体重50キロくらいとして、100グラム360円ですね。黒毛和牛とかよりだいぶ安いけど、量産すればそれくらいになるかな」

―― 劇中世界の数十年先を行くと言われる学園都市の技術ならできちゃいそうですの。破棄された“量産能力者計画”も、じつは実現可能だったかもしれないですわね。劇中では約1万体倒した時点でオリジナルの御坂美琴に計画が露見したのだから、倒す人数が数百人で済むこちらの方法なら、一方通行は無事レベル6になれたんじゃないですの。

鹿野 「できたての3Dプリント人は、すべての細胞がオリジナルよりベストに近い状態になっているとすると、健康で能力はむしろ上になるかもしれませんね。スキャンしてコピーするときに、微小ながん細胞とか老廃物などがあったら、それは削除できるわけだし」

ミサカネットワークはレベル6どころか、人を超えた超知性体!?

―― ツリーダイヤグラムより怖い殿方が目の前にいますの。ところで、ミサカネットワークはあり得るんですの?

鹿野 「ミサカネットワークって?」

妹達が脳情報を共有するミサカネットワークは、設定以上の超性能を発揮する可能性も! (C)鎌池和馬/冬川基/アスキー・メディアワークス/PROJECT-RAILGUN S

―― 妹達はお姉様ほどではありませんが、立派な能力者。欠陥電気と呼ばれてますけども、脳波が同一であることを利用して、脳波を電気信号として送受信し、意識や思考、記憶を共有していますの。それが“ミサカネットワーク”ですわ。

鹿野 「2万人分の視点があるわけですか。面白いですね。ただそのやり方だと、オリジナルの御坂美琴とも共有できてしかるべきですが……」

―― それが、お姉様とはできないですの。と、ここでまた疑問が1つ生まれましたの! 人格同様、脳波も人生経験で変わるものなんですの? ちなみに劇中では、前編でもお伝えしました通り、学習装置と投薬で成長していますの。

鹿野 「まあ、現実の脳波は頭の表面の電位変化を計ってるものにすぎないので、思考とかとは一切関係ないですね。

 誰でも目を閉じればα波が出るし、目を開ければβ波が出る。同じようなものをリアルで考えるとすると、脳の神経回路が作り出している脳磁場かなあ……。まあでも、作中の脳波は、たぶん一種のファンタジー用語でテレパシーみたいなものでしょう。

 ただ、2万人が即時に脳情報を共有できるとしたら、それは面白いですね。真社会性動物というんですが、アリやハチは1匹の脳を調べてもたいしたことないのに、巣全体では農耕や牧畜まで行ないます。群れ全体が1つの知的ネットワークになることで、非常に複雑な事ができるんですね。

 だから、2万人の脳のネットワークは、人を超えた超知性体になりうると思います」

―― なるほどですの。原作ではこの能力を活かして、複数の施設を同時攻撃・制圧するシーンもありますの。クローンのお話に戻りますが、妹達は寿命が短いという設定なのです。テロメアが短いから寿命が短いとのことで……テロメアってなんですの?

テロメアが短い=短寿命は当てはまらない!? 妹達にも長生きの希望が見えてきたかも! (C)鎌池和馬/冬川基/アスキー・メディアワークス/PROJECT-RAILGUN S

鹿野 「テロメアは細胞分裂で染色体を2つに分けるときの、ハサミを入れる余白みたいなところで、分裂するほど短くなっていきます。50回も分裂すると、これが短くなりすぎて細胞分裂はできなくなります。でも、テロメアが短い=寿命が短いはよくある誤解ですね」

―― それが寿命ではないんですの?

鹿野 「大人の細胞の大半はそもそも分裂しないんですよ。分裂しているのは、上皮細胞という皮膚や消化管表面の細胞、人体をドーナツに例えるとその表面の細胞だけです。ほかの筋肉や神経などの細胞は、大人になったら減りはするけどほとんど増えない。つまりテロメアによる分裂回数の限界と、寿命はまったく関係ないわけです。

 ドリーが若くして関節炎を発症したのはテロメアが短いせいだという話が出たこともありましたが、実際にはそういうわけではなく、マウスのクローンも別にテロメアが短いわけでも、寿命が短いわけでもないですしね。あと、がん細胞はテロメラーゼという酵素を持っていて、テロメアを伸ばせるので無限に増殖できます」

―― 劇中では妹達の寿命が短いとして、さまざまな事件の後、各地の研究施設で寿命を延ばすために治療を受けることになりますが、寿命って伸ばせるものなんですの?

鹿野 「じつはですね、なぜ寿命に長短があるのかは、明確にはわかっていないんですよ。つまり、後天的に薬などで伸ばすことはできません。長寿の人は、高血圧になりにくいとか、遺伝的に長生きしやすい特性を持っていることは確かですが、不摂生したりストレスが強ければ早死にします。長生きできるのは、単純に病気をしないからです」

「作家さんによるクリエイティブなイメージを、『こういう方法ならできるでしょ?』って示すのがSF考証のお仕事。“どうすればできるのか”と考えるのが好きなんです」(鹿野氏)

―― では食べ物や生活サイクルこそ重要と。

鹿野 「オリジナルに比べて寿命が短いとして、それでもなるべく延命させたいのなら、規則正しい生活で、楽しく、あまりストレスなく過ごして、病気をしないことが大切ですね。そうすれば、生物学的な寿命の限界を極限まで引き出すことができるでしょう。まあ、それでも事故死はあるけど」

―― もしかすると研究施設とは名ばかりで、実際は妹達がのびのび暮らすための単なるリゾート施設である可能性も否めませんわね……! 本日は驚く話ばかりでしたわ。ありがとうございましたの!

OP・ED情報

1stオープニングテーマ:fripSide「sister's noise」
2ndオープニングテーマ:fripSide「eternal reality」
1stエンディングテーマ:井口裕香「Grow Slowly」
2ndエンディングテーマ:三澤紗千香「リンクス」

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