女子高生、またもや毒牙に掛かる
「おや、久しぶりだな」
「きゃあああ、お久しぶりですジルベールさん! 相変わらずブロンドさらさらで格好良いですね!」
「今まさに大輪の花を咲かせようとしている君たちに比べたら、どうということはない」
「そんな、花だなんて……」
ジルベールに話しかけられた女子高生たちは一様にうっとりと頬を染めた。
彼女たちは、集うのはみな政治家や財閥のご令嬢、幼稚園から大学まで一貫教育で淑女を養成──そんな男たちの理想の園・白薔薇女学院の生徒だ。
クラスタのメンバーがしばらく前にアドレスをゲットした面々である。
ジルベールと女子高生たちは連れだって喫茶店に入り、わいわいと雑談を始めた。
「ここしばらく、皆さんに会えなかったから寂しかったんですよう」
「すまない、忙しかったものだから。今日も私以外の仲間たちは仕事で来られなかったくらいなのだ。SNSにはログインしていたのだが……」
「あれ、ジルベールさん、SNSやってるんですか?」
ジルベールは小さく頷く。
「あ、ここのアカウントなら私も持ってます! ええと、フレンド申請していいですか? そしたらジルベールさんの近況わかるし!」
「もちろん」
女子高生たちがいっせいに恐ろしい速さでスマホを操作し始める。
ジルベールはしばしそれを眺めていたが、やがて自分も端末をいじり始めた。
「あれ、ジルベールさん、何のアプリ使ってるんですか?」
「これはSNSを使いやすくするためのアプリなのだ。仲間がどこにいるのかを表示してくれたり、彼らの撮った写メが見られたりする。検索もできるし……」
「へー、便利そうですね。私も入れてみようかな」
◆
「あれから数日、首尾はどうだ、ジルベールよ」
「はっ。私がターゲットに接触した後、順調にアプリの登録者数は増えつつあります。そして入手・公開したデータはこちらに」
ジルベールが手元の端末を操作すると、モニタにいくつもの表が表示される。
「ふはははは、圧倒的ではないか我が軍は!」
「ねーねー、これって何の情報なの?」
ショタキャラ・蓮が尋ねると、イチトは気分良く答えてくれた。
「ふっ、栄光ある我がクラスタに名を連ねながらこのようなことも判別できないとは論外だが、今回は特別に教えてやろう。
これは女子高生がSNSに登録していたデータが、我がサーバから全世界に公開されているところなのだ。ただし、本来は非公開設定のデータも山ほど含まれているがな!」
「あ、ほんとだ、お父さんの連絡先とか書いてある」
ついにお宝ゲット! さすが俺たちの味方、そこにしびれ(略)
ジルベールが端末を操作すると、さらにモニタの表示が切り替わる。
「おおおおおおおおお、これがマニア垂涎の女子高生の写メ……」
「女子高の内部や自室の写真などもあり、まさしく女子高生の実態と言うに相応しいデータであると自負しております、リーダー」
「よくやった、よくやったぞジルベール!」
「あ、自撮り写メの失敗写真とかもある。これはあまり見たくなかったなー」
女子高生への幻想が崩れること請け合いの一枚である。
「しかも今回は非合法ではないときたものだからな! 警察もマカなんとかも我らに決して手出しできぬのだ! ふっ、今回はもうあの大剣とか銃の先端についた剣とかでざくざくやられることもないのだ。ううっ、痛かった……」
「リーダー、そこで思い出して泣かないでよ」
自慢げなイチトの隣でジルベールは愕然としていた。
「そうだ、あのマカルージュも出てこないのだ……どすどすやられたりざくざくやられたりして、痛かったり痛かったりすることも……」
「も、もしかして会いたかったの、ジルベール? さすがどM……」
「ふははははは、来られるものなら来てみるがいい、マカルージュども!」
「やめてよね、その台詞どう考えても死亡フラグっぽいから」
<第6話へ続く>
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