このページの本文へ

前へ 1 2 次へ

林 佑樹の「Amazonで自費出版本を販売するまでの道のり」 第3回

自費出版本で予算に合った印刷所をチョイスするポイント

2012年07月04日 12時00分更新

文● 林 佑樹(@necamax

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

おおざっぱな本の装丁を決める

 本をどういう仕様にするかを決めるのは、もっとも大きな予算部分であるため、とても迷う。といっても決めなくては始まらないので「おおよそ」決めた状態にして、次のステップに進むというのが出版業界ではよくある話だ。実際のところ、小規模の本であっても、取材先の変更や要素変更は頻繁にあるため、筆者も作成時はざっくりとページ数などを決めてしまい、途中途中で着地点を探すことが多い。

 装丁の要素は、ページ数、フルカラーか1色か(フルカラーを4C、1色を1Cと表記しているところもある)、用紙、中綴じか無線綴じ(平綴じ)。用紙は前述の「コート」「マットコート」などのことで、中綴じは本の背中にホチキスの針が見えているもの。パンフレットや小冊子でおなじみだし、雑誌でも週刊誌はまず無線綴じだ。週刊アスキーを見てみよう。無線綴じは漫画単行本の作りというとわかりやすいだろうか。薄い本のほうが伝わりやすいかもしれないが、綴じ方には2種類ある。コストとしては中綴じのほうが安い。

左が中綴じ、右が無線綴じ(平綴じ)

 ただし、ページ数が増えてくると、薄い紙でないと形状を維持できなくなるため、写真中心の場合は一定ページ数を超えた時点で無線綴じを選択になる。また用紙にある「kg」は1枚あたりの厚さに関係する。数値が高いほど厚いことになるので、届いたサンプルで違いを確認するといいだろう。

すでに作成済みの既刊2冊はA4、16ページ、フルカラー、コート110kg、中綴じという仕様。標準的なパンフレットは大体このような感じだ

 FMスクリーニングの線数が高い印刷所も多く、筆者の同人誌であれば180線が基本になっている。これには理由がある。風景系であればもう少し線数を落としてもいいのだが、じっくり見る読者さんが多いため、それに対応すべく、線数は高めだ。横長本のときはさらに線数を上げているため、正直なところ印刷コストは良いお値段になった。現在は価格改定で安くなっているが、制作当時は横長本仕様だと印刷コストが大幅アップに加えて、色々な面で妥協しなかったため、印刷回りのコストで25万を超えていた。このあたりのシビアなお話は、第6回でじっくりと書きたい。

こちらは気合い入れすぎて、印刷コスト25万を超えた本。A4変形(幅270mm×高さ180mm)、24ページ、フルカラー、コート110kg、表紙のみUVニス加工。いわゆる利益を微塵も考えず、印刷費回収も忘れていた結果といえば、結果なのだが……

 はじめてフルカラー本を作る場合において、印刷コストで混乱してしまう部分なのは事実だ。できるだけ予算オーバーしないようにするには、印刷予算を決めて、そこから逆算でというのがやはりいい。そのときサイズはA4、用紙は暫定でコート110kgにし、ページ数と部数の料金変化を見ていくといい。編集氏の遠い目を考えて、A4、フルカラー、16ページ、コート110kgを暫定装丁にした。刷り部数は100部。印刷コストは3万円になる。安くなったなぁ……。

ざっくりした感じで、およその目安を立てた。A4、16ページ、フルカラー、コート110kg。なお営業日は遅いほど安くなるのが基本。選択営業日内に送付というところが多く、たとえば7日営業日で発注しても、4日後に届くという場合もある

次回「ISBNコード申請編」は、一般流通させるための書類申請

 自費出版物を「書籍」として流通させるのは、ISBNコードが必要になる。申請先は日本図書コード管理センサー。カンタンに言うと、本の裏にあるバーコードを申請するというわけだ。書店に並ぶ本と同様の申請をするため、何かと細かいし、時間がかかる。そんなわけで、先手を打つ形で先に申請を行ない、気になるポイントもチェック。では、また来週!

筆者紹介――林 佑樹

フリーランスの編集・ライター・フォトグラファー。コミケには2回連続出馬し損ねており、コミティアに出ようかとか考えている今日この頃。


前へ 1 2 次へ

カテゴリートップへ

この連載の記事

注目ニュース

ASCII倶楽部

プレミアムPC試用レポート

ピックアップ

ASCII.jp RSS2.0 配信中

ASCII.jpメール デジタルMac/iPodマガジン