デノンは12日、フジヤエービック主催のヘッドフォンイベント“春のヘッドフォン祭 2012”の会場で、ヘッドフォン新ブランド「Music Maniac」のコンセプト機を発表した。
Music Maniacはオーディオ愛好者に向けたハイエンドヘッドフォンシリーズで、一昨年(2010年)の100周年を機に2年をかけて温めてきたプロジェクトでもある。密閉型のオーバーイヤータイプと、カナル型のインイヤータイプの2種類が用意されており、ともに2012年夏の発表を計画。価格は3~5万円程度になる見込みだ。
今回はコンセプト発表ということで、型番などは未公開。オーバーイヤー密閉型がAH-Dシリーズ、カナル型がAH-Cシリーズとなる点のみアナウンスされている。会場では、一般来場者が試聴することもできたが、「まだ8合目のサンプル」と開発担当の田村邦彦氏が言うように、音質面でのチューニングを継続していくそうだ。
独自ユニットを新規に開発、装着感に対するこだわりも
AH-Dシリーズは、自社開発の50mm径のフリーエッジナノファイバー振動板を採用。これはナノファイバー製の振動板の周囲に柔らかなエラトマー樹脂を接着・圧着し、単品スピーカーのウーファー部などに見られるフリーエッジを実現したもの。振動板がよりスムーズに動くため、ナチュラルな表現が可能となる。従来ヘッドフォンでは他社ユニットを購入して使用してきたデノンだが、これは音質を追及した完全オリジナル設計である。
流線型のスマートなフォルムを持つ、ハウジング部分はグラスファイバー(GFRP)製。一般的な樹脂に比べて硬く、振動の減衰が速いため、固有音が少ないという理由から採用した。発表会では田村氏が樹脂製のハウジングとグラスファイバー製のハウジングを指で弾き、その差を解説。一般的な樹脂が「カチャーン、カチャーン」と残響が残るのに対して、同製品のハウジングは「カチン、カチン」と硬質な響き。ハウジング内で音が反射することで生じる音のにごりを減らすことにつながる。
一方装着感では、イヤーパッドに低反発素材を利用し、イヤーカップを楕円ではなく耳の形に近い5角形にするなど、より耳にフィットしやすい形状とした。ドライバーおよびイヤーカップはボールソケットでハウジング部分に接続されており、上下左右360度自由に動かせるという。両出しのケーブルは着脱可能で、端子はφ3.5mm。本体には3mのOFC(無酸素銅)と1.2mのiPhone用リモコン・マイク付きケーブルの2種類が付属し、用途に応じた使い分けが可能だ。