カゲロウデイズは「マミさん」だった
―― ハイペースに行くぞ―、という話だったのですが、1~2作目から「カゲロウデイズ」までは5ヵ月間くらい空きます。これは産みの苦しみのようなものがあって?
じん いや、2作目が前作よりはるかに評価いただいて、その余韻に5ヵ月間ひたっていた感じです。「聴いてくれたー! おおー! やったー!」で、5ヵ月。
―― 余韻めっちゃ長いですね。作風も1~2作目とはずいぶん変わっています。このギターは生ですよね?
じん カゲロウデイズは夏っぽい曲なんですけど、打ち込みで夏って表現しづらくて。焦燥感をもたらしたかったんです。曲を作るときは一応連作というか、物語的な感じでやろうというのが最初にあったんです。次のやつを楽しみにしてもらえるようにしていて。
―― なるほど。当時からストーリーっぽいものを作ろうというのは考えていたんですね。
じん 3曲目はちょっと重い曲をやりたい、本当に「ここでこれが起きてこうなりました」みたいなものにしようと。で、それを朝に投稿して、そのまま仕事に行ったんです。知り合いのボカロPの家に泊まりに行く日だったんですけど、そのときすでに話題になっていて。なんかこれまでとケタが違うんですよ。
―― 今では160万再生ですから。
じん ボカロのデイリーランキングで3位だったんです。いままで23位とかだったので、やったー! と思って。なんですけど、そのときから肺に違和感をおぼえはじめて……。
―― えっ。
じん 次の日、病院行ったら肺に穴があいてて。
―― ええーっ。
じん どうも肺気胸という病気だったらしくて。「仕事は休みなさい、1週間くらい療養しなさい」と。でもそこから1週間、療養中は1位になった余韻でいっぱいで。「これは2作目とは比較にならないくらい、長いこと余韻が味わえる……」とか思ってて。
―― そのまま伝説にならなくてよかったです。ただ、カゲロウでそれだけ人気が出てしまうと、次の曲が作りづらくなるということはなかったですか?
じん いや、ストーリー上重要っていえば重要なんですけど、最終回じゃないって感じの。「マミさんが食われたぞ」くらいの感じです。
―― なるほど、3話目くらいの……。「ポストロックからボカロ」もそうですけど、なんかそういう感覚が新しいですね。