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最新ユーザー事例探求 第21回

提携先の基幹システムとの接続でEMCのVNXを活用

メディアドゥが語るユニファイド・ストレージVNXのメリット

2012年05月02日 09時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp 写真●曽根田元

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電子書籍配信プラットフォームを提供する名古屋のメディアドゥは、TSUTAYA.comや紀伊國屋書店などの基幹システムと連携する重要なアダプターシステムにおいて、EMCのストレージ「VNX5300」を採用した。メディアドゥにシステム概要とVNX採用の背景を聞いた。

競合他社との差別化ポイントは「IT活用」

 メディアドゥは名古屋を本社とするメディア関連企業で、携帯電話の販売会社としてスタートし、その後は音楽配信などインターネット関連事業を展開。約6年前から携帯電話向けの電子書籍配信プラットフォームの提供を開始し、現在同社のビジネスの中心としている。メディアドゥ 取締役 常務執行役員の森秀樹氏は、「弊社自身も直接エンドユーザー様にお届けする店舗を持っているのですが、実際は構築してもらえるパートナー(販売店)を募集し、コンテンツ配信のバックエンドを提供するのが中心で、数百社の販売店にてご利用いただいております」と説明する。

メディアドゥ 取締役 常務執行役員 森秀樹氏

 同社の電子書籍配信プラットフォームは、出版社などのコンテンツホルダーからコンテンツの提供を受け、それらを電子化。電子化されたコンテンツを提携した配信サーバー経由で販売店の店舗に提供するという出版流通の「取次」の役割を果たす。メディアドゥは独立系の事業者として、講談社や小学館など950社を超える出版社との提携により、ビジネスを推進している。

 同社の競争力の源泉は、まさに「IT活用」だ。「当社は、他のサービス事業者様と比べて、提供開始当初よりIT活用による自動化を前提としてプラットフォーム作りをしております」(森氏)とのことで、徹底的なIT活用により、ビジネスを効率化している。「入れ替わりの激しいコンテンツですし、可能な限りリアルタイムに施策の反応がわかるよう、レポートを提供しています」(森氏)という。

 こうした同社の競争力の源泉になるのが、電子書籍だけではなく、音楽や映像などのマルチメディアの配信まで視野に入れた同社のCAS(コンテンツアグリゲーションシステム)システムだ。CASシステムは、「md-dc」というコンテンツ配信エンジンと、「MDCMS」というサイト管理システムから構成されている。コンテンツをmd-dcに登録しておくと、エンドユーザーはMDCMSで構築されたサイトを経由して、md-dcからコンテンツを直接ダウンロードするという形だ。コンテンツホルダーの代わりに料金の回収を代行するほか、著作権保護やレポーティングなどの機能を提供し、電子書籍販売の敷居を大幅に下げている。

md-dcとMDCMSなどのCMSシステム

 2006年に構築したこのCASシステムにおいて、メディアドゥはコンテンツや属性用のメタデータ、集計データなどを格納する「Oracle RAC」、スケールアウトNASである「Isilon」を採用した。2011年には、配信基幹システム向けに「Oracle Exadata」を導入し、処理の高速化を実現したという。

ユニファイド・ストレージならではの魅力

 こうしてビジネスの拡大と共にCASシステムを増強してきたが、新たな顧客との取引を開始する際に、問題が発生した。「TSUTAYA.com様や紀伊國屋書店様の基幹システムとCASシステムとの直接接続する仕組みがなく、そのままではつながらなかったんです。とはいえ、TSUTAYA.com様や紀伊國屋書店様側のシステムを変更するのも難しいという事情がありました」(森氏)。だが、昨今の爆発的なスマートフォンの普及とそれにともなう電子出版の伸びは無視できないところに来ていた。「両社とのビジネスを推進するためには、1ヶ月の遅れが致命的になると思いました」(森氏)とのことで、両社の独自仕様をCASシステムで利用できるようにするアダプターシステムを開発することにした。このmd-dcのサブシステム「md-fp」で採用されたのが、EMCのストレージ「VNX」である。

 EMCのVNXは、従来から同社が展開してきたSANストレージ「CLARiX」、NASの「Celerra」を統合して生まれたミッドレンジストレージ。SAN(FC/iSCSI)とNAS(CIFS/NFS)のいずれにも対応するため、「ユニファイド・ストレージ」と称される。インテルの最新CPUを採用し、6GbpsのSASドライブインターフェイスに対応するため、性能が高いのが特徴。また、SANコピーや仮想プロビジョニング、ファイルレベルの重複除外、自動階層化機能の「FAST」、ブロック圧縮などの高度なストレージ機能を満載している。さらにこうした特徴を持ちながら、従来のモデルに比べて、高いコストパフォーマンスを実現しており、スモールスタートができるのも大きな魅力といえよう。

 メディアドゥにとって、EMCストレージは実は初めてではない。旧配信基幹システムのストレージとしてEMC製品を採用しており、その実績を評価していたという。システムインテグレーターによるVNXの提案に対し、森氏は、「初期投資を抑えつつ、需要が拡大した場合のキャパシティを考えると、ユニファイド・ストレージであるVNXは要件にあっていました。自社での旧EMC製品の実績もありましたし、コストパフォーマンス的にもVNXはありがたかったです」と選定に際しては、あまり迷いはなかったと話す。

 コストパフォーマンスや容量のほか、もちろん信頼性はきわめて重要である。「他社様に使っていただく弊社のようなプラットフォーム事業の場合、システムは10秒ですら止められません。ですから、増設や障害対策などもシステムを止めずにオンラインで行なう必要があります」(森氏)とのこと。その点も、従来の実績やトラブルの少なさから安心して導入できたという。

メディアドゥ 技術本部 技術部 運用課 係長 矢野洋志氏

 そして、なによりVNXの大きな選定理由となったのが、SANとNASを統合したユニファイド・ストレージであるという点だ。メディアドゥ 技術本部 技術部 運用課 係長の矢野洋志氏は、「以前のシステムはコンテンツを収めるファイルサーバとデータベースのストレージは別々でした。今回は管理の手間を考えて、1つの筐体にファイルサーバーもデータベースも格納できる製品をご提案いただきました」と述べる。昨年発表されたばかりの新製品だが、「弊社もシステムインテグレーターさんも、新しいテクノロジーを積極的に採り入れ、よりよいサービス展開につなげていこうという点は一致しています」(森氏)とのことで、選定における障壁にはならなかったようだ。

SSDをDBのキャッシュとして用いて高速化

 システム自体の発注は2011年3月で、HPのサーバーによるOracleRAC構成で、Cisco Catalyst、CitrixのロードバランサーやFortinetのUTMなど全基盤を構築。その共有ストレージとして、最大125台のドライブを格納できる「VNX5300」が配置されている。DBサーバーからはFC接続、アプリケーションサーバーからはLAN接続というユニファイド構成で利用されており、EMCのクローン技術を使って、データがバックアップされている。特筆すべきは、DBの高速化のために、SSDが採用されている点だ。200GB×3のフラッシュがDBのキャッシュとしてVNXに組み込まれている。

メディアドゥでのVNXのシステム構成

 こうして構築された「md-fp」は、問題なく稼働しており、高い性能と信頼性を維持できているという。森氏は、「フィーチャーフォンが一気にスマートフォンに置き換わり、データも大容量化してきますし、コンテンツも拡充し続けなければなりません。今まで以上にストレージにかかる負担は大きくなってきますし、容量も臨機応変に増やさなければなりません。VNXにはますますがんばってもらう必要がありますね」と高い期待を寄せている。

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