これ2ドルで買ってもらうのは申し訳ないとか、そういう感覚もある
―― いろんな事を試して失敗しつつ、少しづつ前進している感じなのかな。
寺田 そうね。現実の街のように整備されつつあるというのが実際のところで。先のことを想像するのも無意味なので、こうなって欲しいとしか言えないけど、でも言えば誰かがそれに賛同して、そこに近づいていく。それが未来なわけじゃないですか。
―― なるほど。
寺田 たとえばウルトラセブンの「ピピッ」ってなるやつ※、ああいう未来なるものにワクワクしていた部分がいまだにあるんだけど、それは今すでに現実になってるわけだよね。例えばセカンドライフは早すぎて難しかったけど、あれは現実を全部別のものに置き換えようとしたから無理があったんで。
※ ウルトラ警備隊隊員が装備する腕時計型通信機「ビデオシーバー」のこと。
―― インターネット全体がソーシャルでセカンドライフ化しつつある感じも。
寺田 やっとね。ただね、自分の描いたものにどれほどの価値があるんだろうかとか、これ2ドルで買ってもらうのは申し訳ないとか、そういう感覚もあるわけですよ。
―― あらっ、それまたは何で?
寺田 自分一人で価値を創り出すというのがハードル高いんだよね。「これ2ドルで?」って思うもんね。でも他人が「あなたの作品を売りたいんです」って言ってくれると安心するじゃん。作品をプロデュースなり、キュレートなりする人がいて、やっと自分の価値が確立する。それは、メディアがどうなろうと同じだと思うよ。
―― メディアが変わると表現も変わるという話があって、絵の場合どうなるのかにも興味あるんですけど。
寺田 まあ、自分が何をしたいかということに止めを刺すけどね。オレの場合は絵を描いて上手くなりたいとかさ。
―― それはいまだにそうなんですか?
寺田 鉛筆一本でどこまで描けるのかとかね。ただ、人間はスキルにも愛着を抱いてしまう。超絶ギターが上手いとか、それだけで持つじゃん、曲がヘボでも。映画だって、ストーリーも脚本もひどいのに、役者の演技が良くて観ちゃうとか。そこら辺は勘違いしないようにしてるけど。どういう条件になっても、自分が何を目指しているかに自覚的であれば、作るものは変わらない気がするけどね。