ソニーとEricssonは10月27日、Sony EricssonのEricsson分の株式をソニーが取得することで合意したと発表した。ソニーはEricssonに現金で10億5000万ユーロ(約1100億円)を支払う。取引は2012年1月に完了を見込む。
Sony Ericssonは、ソニーとEricssonがお互いの携帯電話事業を持ち寄って設立した合弁会社だ。立ち上げは2001年10月で、ちょうど10年を迎えたことになる。
ソニーの4スクリーン戦略に欠かせない
スマートフォンにおける開発の高速化
今回は動画で配信された記者会見の模様を紹介しよう。
ソニーの会長兼社長 CEOのHoward Stringer氏は買収の狙いについて「タブレット、PC、TV、それにスマートフォンの4スクリーン戦略に向けた自然でロジカルなステップ」と説明した。4スクリーン戦略とは、「これらの端末が相互に接続し、Sony Entertainment Networkが提供する新しいエンターテインメントの世界にアクセスすること」だ。この戦略に向かって、急ピッチで動く体制が整った、とStringer氏は述べる。
ソニーは今年に入り、Android搭載のタブレット、音楽、映画、ゲームなどのコンテンツ配信プラットフォームのSony Entertainment Networkを発表している。スマートフォンを完全子会社化することで、ソニー製品やサービスとの統合をより密に、高速にしていく。
新ブランドのSony Entertainment Networkのもと、サービス名もこれまでの「Qriocity」から音楽配信は「Music Unlimited」、動画配信は「Video Unlimited」という名称になる。「ソニーはすでに3億5000万台のネット対応端末を出荷しており、構築したプラットフォームを使ってコンテンツ、エンターテインメントエクスペリエンスを提供できる」と語る。
すでにPlayStaion Networkは9000万人に利用されており、Music Unlimitedは1000万曲以上を、Video Unlimitedは新しいものを中心にそろえるという。これらに加えてソニーのグローバルブランド、デザインなども強みとなると続ける。
インフラにビジネスのターゲットを絞るEricsson
ソニーはコンテンツの強味でAppleを追いかける
一方、Sony Ericssonを手放すEricssonは、売却により通信インフラ事業にフォーカスし、ビジョンとしている“ネット接続端末500億台時代”の実現を図る。インフラ事業側のビジネスが変わっており、「もはや携帯電話事業を持つ必要はない」とEricssonのCEO兼社長のHans Vestberg氏は語る。今後もソニーとの関係は継続し、共同でのイニシアティブも展開する。今回の合意の一部として、特許クロスライセンス契約を締結することも発表されている。
Stringer氏は、傘下となった後のブランド名などについては、まだ未定とした。だが、現実にスマートフォンでソニーは出遅れている。Stringer氏も「AppleやMicrosoftが持っているインフラを構築するのには、かなり長い時間と忍耐を要した」と述べ、アナログカンパニーからデジタルカンパニーへの転身が遅れたことを認める。
それらを結びつけるプラットフォームとしてSony Entertainment Networkを立ち上げたところであり、「タイミングとしてこの上ない」と述べる。強みとして何度も強調したエンターテインメントコンテンツについては、「競合を上回る」と自信を見せる。これらを結びつけるにあたって「スマートフォンはパズルの最後のピースといえる」し、「急速に追いつくことができる」と将来に楽観している姿勢を強調した。
出遅れているアメリカ市場を強化する
webOS買収については「現時点では考えていない」
Appleではなくソニーを選ぶとすればその理由は? という問いについては、「我々の製品のほうがよいから」と簡潔に述べた。また、Sony Ericssonは日本ではよい業績を収めているが、アメリカではオペレーターとの関係が構築できていないために出遅れているとして、アメリカ市場強化が急務であるとみていることをにおわせた。
先に発表した第3四半期の業績報告書で、Sony Ericssonの売り上げの80%がAndroidベースのスマートフォンとなっているが、ソニーの傘下に入った後もハイエンドへのフォーカスは変わりないようだ。そこでのプラットフォーム戦略については明言は避けた。だが、ウワサとして浮上しているHewlett-Packardの「webOS」買収の可能性については、「決してないとはいわないが、現時点では考えていない」とコメントしている。