データセンターや拠点のIT機器を、まるで手元で扱っているかのように操作できるのがラリタンのリモート管理ソリューションだ。ラリタンのリモート管理ソリューションが、今なぜ管理者に必要か? その理由をラリタン・ジャパンのテクニカルセールス&サポート部 マネージャーの柏倉啓一氏に聞いた。
データセンター移設とともに考えたいリモート管理
3・11の大震災や計画停電の影響で、IT機器を社屋のサーバールームからデータセンターに移そうという動きが加速している。また、DR(Disaster Recovery)の目的で、郊外や地方、さらには海外にバックアップサイトを構築する企業も増えてきた。しかし、データセンターにIT機器を設置しても、遠隔地からきちんとオペレーションできなければ意味がない。
柏倉氏は、「震災当日の被災地や首都圏の様子を思い出していただきたいのですが、道路は渋滞、電車は動かずで、交通網は完全に麻痺という状態でした。IT機器の無事や障害の原因をいち早く確認したいのに、データセンターどころか、そもそも会社にたどり着けませんでした」と指摘する。データセンター移設や計画停電への対応も重要だが、IT担当者としてはいつでもどこからでもオペレーションできる環境の構築も必須というわけだ。
こうした「いつでもどこでもオペレーション」の環境構築に最適なのが、ラリタンのリモート管理ソリューションである。柏倉氏は、「震災への対応に限らず、データセンター分散や電力問題もあり、先延ばしにしていたリモート管理ソリューションを導入しようという動きが高まっています」と語る。では、なぜラリタンのソリューションが最適なのか? 以下では、7つの理由を見ていこう。
1、サーバーも電源もネットワーク機器も
リモート操作できる
ラリタンのリモート管理ソリューションは、モニター、キーボード、マウス、USBなどのインターフェイスを統合し、サーバーをリモート管理するKVMスイッチ「Dominion KX IIシリーズ」を筆頭に、スイッチやルーターなどのシリアル機器を管理する「Dominion SXシリーズ」、Dominionシリーズを統合管理する「CommandCenter Secure Gateway(以下、CC-SG)」、リモート管理可能なインテリジェントPDU「Dominion PXシリーズ」などで構成されている。
つまり、サーバーでも、ネットワーク機器でも、電源でも、IT機器はラリタンの製品でひととおり管理できるのだ。
2、サーバー組み込みのコンソールよりも多彩な機能
ラリタンのDominion KX IIシリーズは、KVMスイッチの代名詞ともいえる実績のある製品。IPネットワーク経由でOSのデスクトップを見るだけではなく、BIOSレベルまでをチェックし、遠隔から操作を行なえる。
こうしたリモートコンソール機能は、最近多くのサーバーの管理プロセッサーに組み込まれるようになっている。しかし、Dominion KX IIではサーバーの管理プロセッサーに対して個々に設定を施す手間はなく、IPアドレスの付与もDominion KX IIだけに行なえばよいので、設定や管理の手間も軽減される。また、HD解像度への対応や「ずれないマウス」と呼ばれるマウス同期機能、通信の暗号化やログ、複数管理者のサポートなど高度なセキュリティ、仮想メディアのリモートマウントなどの多彩な機能を備えている。
さらに最新のDominion KX II(Version 2.4)では、後述するスマートフォンやタブレットへの対応やリモートオーディオのほか、複数サーバーを容易に監視できるオートスキャン機能、漢字のサポート、MacとLinuxでの仮想メディアサポートなどが追加された。専用機だけに、サーバーのリモートコンソール機能をはるかに凌駕するといって過言ではないだろう。
また、1ポート・1ユーザー対応の「Dominion KX II-101 V2」から64ポート・同時8ユーザー(ネットワーク経由)の「Dominion KX II-864」まで幅広いラインナップが揃っているのも大きな魅力だ。
3、KVMスイッチのアドレスを知らなくても使える
複数のサーバーを操作しようと思うとDominion KX IIは増えてくる。これを統合管理するのが、CC-SGである。CC-SGは独自のディスカバリプロトコルを使って、サーバーに接続されているDominion KX IIを自動的に登録する。そのため、CC-SGを用いている環境では、ユーザーはCC-SGのIPアドレスのみを知っていれば、ログインして接続したいサーバーにすぐにアクセスできるというわけだ。
加えて、CC-SGではDominion KX IIを介さず、直接サーバーにつなぐ場合にも活用できる。VMware ESXの仮想マシンや各サーバーのGUIツールをWebブラウザ経由で使ってもよいし、RDPやSSH、Telnetなどで直接操作を行なってもよい。サーバーなどのIPアドレスを知らなくても、CC-SGにログインすれば、一覧から対象のサーバーが選択できるので、使い勝手はきわめてよい。「障害対応は初動の遅れが致命的になります。Dominion KX IIや操作対象のサーバーのアドレスやログイン情報をExcelの表などでつきあわせている時間はもったいないのです」(柏倉氏)とのことで、操作対象を柔軟に選択できるのが大きなメリットだ。さらに、CC-SGを経由したアクセスはすべてログに残り、ユーザーごとのアクセス制限も可能なので、セキュリティ面でも安心だ。
4、専用アプリなしでiPhoneやiPadから操作できる
最新のDominion KX IIとCC-SGでサポートされた強力な新機能の1つとして、スマートフォンやタブレットでの遠隔操作が可能になった点が挙げられる。専用のアプリは一切不要で、スマートフォンやタブレットを持っていれば、いつでもどこでもBIOSレベルでアクセスできる。
iPadでの操作は実際にデモを見たが、PCの代替として充分機能する印象だ。「災害時は会社にPCを取りに行けない、ビル内に入れないという事態も生じますので、iPadを常時お持ちの方にとってみれば有用な機能だと思います」(柏倉氏)。さすがにiPhoneの画面では操作に限界があるが、外出先でiPhoneしか持っていないといった際に、ログインして状況の確認ができることは、非常時にとても安心できる。
5、高品質なデジタルオーディオがリモートで扱える
さらに最新のDominion KX IIでは、リモートでオーディオを扱える。サーバーのサウンド入出力をDominion KX II経由で行なえるので、サーバー側で再生した音声を手元のPCで聞いたり、PC側で録音することが可能になる。放送関連などビデオコンテンツを扱うユーザには特にうれしい機能だが、普段使いにも役立ちそうだ。「たとえば、データセンターの音声やアラートを拾ったり、音声ファイルを再生したりが可能になります」(柏倉氏)とのこと。アナログではなく、デジタルオーディオなので、CDクオリティの再生が可能だ。
もう1つのDominionで高度な電力制御と管理を実現
KVMスイッチに加え、最近同社が力を入れているのが、インテリジェントPDUの「Dominion PX」である。インテリジェントPDUとは、IPネットワーク経由で消費電力をモニタリングしたり、電源のオンオフを行なえる名前の通り「賢い電源タップ」だ。
Dominion PXはPDUはもちろん、コンセントごとに電力のモニタリングや電源のオンオフができるため、高度な電力制御や管理が実現する。また、オプションのセンサーを接続することで、ラックの温度・湿度もモニタリングできる。操作はすべてWebブラウザから可能で、IPネットワークがあれば、どこからでも電源操作が行なえるわけだ。
6、電源のオンオフをスケジュールに従って制御できる
Dominion PXの特徴の1つは他のラリタン製品と高度に連携する点。たとえば、「Power IQ」というソフトウェアを使うと、スケジュールに従って電源のオンオフなどを制御できる。いつ(日付指定、曜日指定、時間指定)、どんな操作を(オン/オフ)、どのように(一度/定期的)などをGUIツールから指定すればよい。
たとえば、節電のために、バッチ処理が終わる金曜日の3時には業務サーバーの電源を落とし、週明けの月曜日の朝には起動しておきたいというスケジュールを組むことが可能。管理者がわざわざ深夜まで起きていたり、早起きして、手動で操作しないで済むわけだ。
7、手順を踏んで自動的に電源を落としてくれる
確かにスケジュールに従って電源を入れたり、切ったりしてくれるのは助かるが、いきなり電源を落とされるのは困る。データが壊れたり、ソフトウェアが起動しなくなる可能性もあるからだ。
こうした事態が起こらないようにするには、Power IQのグレースフルシャットダウン機能を使うとよい。この機能はWindowsにはRDP経由で、UNIXにはSSH経由でシャットダウンコマンドを発行し、OSを終了させてから電源をオフにする。これなら安心だ。
さらに、Dominion PXではセンサーで捉えた温度や湿度にしきい値を設定し、ファンや予備空調を使うといった高度な制御も可能だ。たとえば、室温が30℃を超えたときにファンの電源をオンにし、下がったら電源をオフにしてしまうといった省エネ運用が容易に実現する。「必要なときに電気を使い、使わないときは切っておく」という運用を支援する試みだ。しかも、これがすべてリモートから実行可能なのである。
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ここまででラリタンのKVMスイッチやインテリジェントPDUを用いたリモート管理の姿を見てきた。管理者であれば、障害時の即時対応はもちろん、日々のIT機器運用に大きく貢献しそうだという感触は得られたのではないだろうか? ラリタンの柏倉氏は「単にコンソールが見られるのでなく、日々の運用を楽にする『濃いリモートアクセス』を提供します」とアピールする。サーバーのデータセンター移設やバックアップサイトの構築などを検討しているユーザーは、ラリタン製品をプロジェクトの予算に入れておいた方がよい。