Intel MICでの性能向上事例を披露
LTE基地局がSandy Bridge上で動く?
まずアプリケーションについてだが、ここでは欧州の研究機関「CERN」を例にとって説明された。CERNの実験では毎秒4000万回にも上る粒子の衝突を観測するために、結果として毎年15~25PB(ペタバイト、1万5000~2万TB)のデータを処理する必要性がある。そのために、CERNに現在25万コアのインテルCPUを集積したコンピューティング・グリッドがあるとラトナー氏は述べた。
問題は、この25万コアにどうやって仕事をさせるかである。ここで紹介されたのがインテルの並列化ソフトウェア開発ツール「Intel Parallel Studio XE」で提供される、新しいマルチコア対応のライブラリだ。これを使うことでXeonベースのマルチコアシステムのみならず、Intel MICアーキテクチャーを混在したメニーコアクラスター環境でも、性能が向上することが紹介された。
重量級のシミュレーション以外にも、Intel MICは利用できるという説明では、 分散メモリキャッシュサーバー「memcached」を移植した例が示された。通常memcachedを使うと、最大で56万トランザクション/秒の処理が可能というレポートがある。一方MICアーキテクチャー上で48コアをフルに使った場合、80万トランザクション/秒を超える速度でキャッシュ要求を処理できるという。
ほかにも、JavaScriptがマルチコア環境で高速化されるデモなども披露され、HPC分野のみならず、広くマルチコアが効果的に使える環境が、普及しつつあることが示された。
また、マルチコアのもうひとつの例として示されたのが、「LTE」である。日本でもNTTドコモの「Xi」が始まるなど普及の兆しを見せているが、これの基地局をSandy Bridge上でソフトウェアで実装したというデモが披露された。
実を言うとLTE基地局はずいぶん進化しており、以前のような「汎用CPU+DSP+FPGAの塊」から、「DSP内蔵のマルチコアCPU」に移行しつつある。だから、基地局をソフトウェアベースで構築することそのものは、それほど珍しくない。ただしスループットの観点では、専用アクセラレーターやDSPを内蔵しないと、十分なパフォーマンスは得にくいので(あるいは消費電力が過大)、全部をソフトウェアのみで処理というケースはほとんどない。
今回デモも最大で40Mbpsそこそこだから、決して高性能とは言えないし、これだけで基地局を構成するのは無理がある。だが、これまで実装されたことがなかったLTE基地局をx86ベースで実装して、実際に動いたという点では大きな前進である。今後Intel MICアーキテクチャーの性能が大きく上がると、こうした用途も実用的になるのかもしれない。
この連載の記事
-
第3回
PC
IDFでインテルが明らかにした耐久性の高いSSD -
第2回
PC
2012年のノートPCは待機時間・消費電力がさらに減る -
第1回
PC
IDF初日の基調講演で注目はAndroidのAtomへの最適化 - この連載の一覧へ