中古のネットワーク機器をグローバルで販売するNHRだが、今回はシンガポールのAPACオフィスを見学することができた。新品を超える品質を確保するための検査態勢、平均3日という出荷体制はどのように実現されているのだろうか?
有資格者がテスト!梱包もオリジナル!
NHRのAPACオフィスは、空港にほど近いチャンギビジネスパークのビルの1フロアを使っており、そこに倉庫やバックオフィスがある。
フロア内の倉庫では、入庫スペース、検査やテストを行なうスペース、梱包などを行なうスペース、出荷を待つスペースなどが隣り合って設置されている。入庫は朝10時で、このフロアの配置のとおり、検査やテスト、梱包などを経て、出荷に至る。われわれは夕方に見学したので、すでに入庫・出庫スペースには商品はなく、その日の作業は終了している状態であった。
機材はさまざまな理由でNHRの元にやってくる。たとえば、通信事業者などの大きなプロジェクトがキャンセルされた場合は、あらかじめ抑えられていた商品が新古品として数多く流れてくるという。オプション品等を加えると、アイテム数は5000を超えるという。エクストリームやジュニパーなどの機器も一部用意されているが、実際の市場シェアを反映するとおり、やはりシスコ製品が圧倒的に多い。ボックス型の業界標準機Catalyst 2900や3500シリーズ、さらにはシャーシ型の4500や6500シリーズまでがずらりとスタックされている様はまさに圧巻といえる。このように実際に在庫を所有していることが、NHRの大きな強みになっている。
これらの機器は電気的な検査や動作検証はもちろん、CCNAなどの有資格者が実際に起動してテストプログラムを走らせる。さらにはコンフィグを事前に また、シャーシ型スイッチのモジュールなども可能な限り洗浄され、見た目も中身も新品同様になった状態で、NHRのシールの付いたダンボールで梱包される。梱包に関しても、輸送中の事故を防ぐためのオリジナルのパッケージを作ったという。前回の記事で書いたとおり、とにかく中古品であることのマイナス面を徹底的に取り除くべく、大きな労力が費やされているわけだ。
さて、こうした倉庫スペースとは別に、営業やサポート、バックオフィス系のフロアもある。営業やサポート部隊はアジア各国をカバーするため、各国語を話せる複数のスタッフから構成されるまさに多国籍軍だ。就業時間や休日なども担当している国によって違うため、ワークタイムはわりとバラバラなようだ。
スピーディな出荷を実現するための工夫がいろいろなところに盛り込まれた洗練されたロジスティックという印象だ。
最新のネットワーク機器は果たして必要なのか?
NHRによると、中古市場の割合は全ネットワーク市場規模の0.5%に過ぎず、機器ベンダーのビジネスを脅かす存在にはなっていない。とはいえ、通信事業者やエンタープライズ企業での利用も多く、このまま同社が成長を続け、数%にまで至れば、機器ベンダー自体にとってみればやっかいな存在となるかもしれない。なにしろ戦う相手はかつて自身が手塩にかけて育てた自らの製品なのだから。
とはいえ、サーバーやストレージに比べて、最新ネットワーク機器の価格はまだまだ高い。データセンターの事業者にとってみれば、仮想化や省エネに対応した付加価値の高いスイッチは大きな魅力ではあるが、導入コストの面で二の足を踏んでしまうのもまた事実だ。実際、イベント内でのユーザーの講演では、高機能な製品を求めるユーザーだけが多いわけではないことも強調された。通信事業者にとっても、既存の通信サービスを維持するためだけに大きなコストを割くことはできず、保守期限が切れても、既存の製品を使い続けたいというのが本音だろう。
こうしたニーズに応える1つの選択肢として、今後中古品は1つの選択肢となるはずだ。予算が足りないから一部は中古品にするとか、どうしても古い機種をそのまま使わなければならないといった理由で、NHRと取引をはじめた企業も多いという。大震災以降の景気後退、グローバル化の進展、急激な円高により、ITやビジネスが大きく変わる中、保守的な日本でも受け入れられていく可能性もあるのではないだろうか?。