ネットワンが最新のBCP/DR構築ノウハウを紹介
DRのトレンドは仮想化とアクティブ-アクティブ構成
2011年08月26日 10時00分更新
8月24日、ネットワンシステムズは同社のBCP/DRへの取り組みについて紹介する記者説明会を開催した。新発表等は特に行なわれなかったものの、現状最新のDRシステムの構成等が紹介された。
RTO短縮に寄与する仮想化
今回紹介された同社の災害対策ソリューションでは、仮想化技術の活用が前面に押し出されている点が目につく。同社はもともとネットワークに強みを持つことから、DRでも特にネットワークやインフラ周りを中心としたバックアップなどに力を入れている。仮想化環境では、仮想サーバーのOSを含めたシステム全体のバックアップが容易だというメリットがあるが、これは反面でバックアップのデータ量が膨大になってしまうということにもつながる。
この問題に対する同社のソリューションは、EMC Avamarのストレージの重複除外技術を活用することだ。重複除外は仮想化環境でなくとも効果が期待できる技術だが、仮想化環境の場合は各仮想サーバーごとにOSイメージが存在するなど、重複データが大量に存在することから特に大きな効果が期待できる。同社のビジネス推進グループ マーケティング本部 ソリューション・マーケティング部の渋屋 隆一氏は、具体的な導入事例に基づく構成例を紹介し、重複排除技術を活用することでバックアップデータ量を削減し、バックアップ時間を短縮できることを示した。
また、DRに関しては、物理環境から仮想環境へ移行することのメリットを中心に紹介が行なわれた。同氏は「物理環境での災害対策には、専用のハードウェアやバックアップサイトの常時メンテナンスが必要」「復旧手順も複雑化し、実際の切り替え時にはRTOが長期化する可能性がある」と指摘した。一方、仮想化環境では「本番サイトと同一のスタンバイサーバーは不要」「異なるハードウェア上に複数システムを統合できる」「古くなったサーバをバックアップサイトで再利用できる」といったコスト面のメリットに加え、復旧手順が簡単になるという。このため、仮想環境でDR環境を構築すれば、コストの抑制とRTO短縮が両立できることになる。
こうした仮想化環境のメリットを享受するためには、システムごとにハードウェア単位で分断されたサイロ型システムから、重要度に応じて適宜仮想化インフラ上に統合されたICT共通基盤に移行することがまず第一歩で、この共通基盤ができれば、その上でシステムの重要度に応じてさまざまな技術を取捨選択して目的に応じたDRソリューションが構築できることが紹介された。
DRもアクティブ-アクティブ構成が主流へ?
さらに、同氏が最新のトレンドとして紹介したのが、従来のアクティブ-スタンバイ構成のDRサイトからアクティブ-アクティブ構成への進化だ。従来型のアクティブ-スタンバイ構成は導入事例も少なくなく、すでに実証済みと言える状況だが、アクティブ/アクティブ構成はまだ実証例が豊富とは言えない段階であるため、今後検証を積み重ねていくことの重要性も指摘された。
アクティブ/アクティブ構成は、仮想化ベンダー各社がアピールするデータセンター間のシームレスな接続をDRに活用するという考え方だ。ここでは、遠隔データセンター間をL2フラットのネットワークで相互接続し、サイト間で仮想サーバのライブマイグレーションを行なう。仮想化ベンダーからはあまり聞かれない話として印象に残ったのは、各サイトごとにロードバランサーを配置しておくことのメリットが強調された点だ。ロードバランサーによってサイト切り替え時間が高速化される、といった指摘はネットワークに強い同社ならではの視点と言えそうだ。
大震災以後、BCP/DRの重要性はユーザー企業にも認知されてきているが、一方で導入の敷居は相応に高く、気軽に取り組めるものではないのも確かだ。同社では、ユーザー企業の支援のためのコンサルティングサービスとして「ICT-BCP診断サービス」と「ICT-BCP策定サービス」の2種類のサービスを用意し、診断から具体的な計画策定までを支援する体制を用意しているという。
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