Symbianへの投資を続けるとするも
開発コミュニティからは冷ややかな視線が
だが開発者を中心としたコミュニティは、これらSymbianのニュースに良い反応を示してはいない。もちろん、Nokiaが2月に発表した方針変換によりSymbianの開発は段階的に終了という将来が見えているからだ。そこでNokiaは移行期間を乗り切るにあたり、3月末に開発者向けフォーラムに公開書簡を掲示し、開発者コミュニティに理解を求めた。
その中では、2011年から2012年はSymbianからWindows Phoneの移行期間になり、その間はMicrosoftとの作業を進めながらも、1億5000万台のSymbian端末を出荷したい、としている。
Symbianはこれからもプラットフォームの強化を続ける予定で「競争力を強化するためにユーザーエクスペリエンスを改善する」という。中でもSymbianが大きなシェアを持つ中国、インド、ロシアなどの市場で製品ポートフォリオを強化する。具体的な強化分野としてはデバイスとサービスの統合、イメージングや位置情報ベースなどNokiaが得意とする分野に加え、グラフィック速度の改善などハードウェア側の性能などが挙がっている。
Windows Phoneについては、「できるだけ早く端末を投入したい」としながらも、言語対応やローカリゼーションなど多くの作業があると記している。
公開書簡ではこのほか、Symbianと「MeeGo」の開発技術という役割を持つ「Qt」へのコミット、ローエンド向けの「Series 40」への取り組みなどを記してはいるが、具体的な図が描きにくい。将来の「革新的技術」という位置づけになったMeeGoについては、数ヵ月以内に詳細を明らかにするとしている。
書簡の文中では「Symbianユーザーと開発者を見捨てない」「Qtへの投資を続ける」などの点を強調しているにも関わらず、開発者コミュニティの反応は厳しい。
実際にWindows Phone端末が登場していないこともあり、Windows Phoneをメインのプラットフォームにすることへの反対意見は相変わらず多いようだ。たとえば、4年間Symbian上での開発に従事したあとに、Androidに取り組んでいるという開発者は、AndroidとiPhoneの強みとして、技術的には不完全ながらマーケティングが優れていると評する。そしてアメリカでWindows Phoneを実験的に利用して様子を見つつ、Symbianにフォーカスしてはどうかと提案する。Windows PhoneではQtが利用できない点についての反発もあるようだ。
Nokiaに戦略を変える必要性があったことに異論はないとしても、新しい戦略に向けて既存のコミュニティをどう納得させるのか、Nokiaにとって難しい状況がまだ続いている。
筆者紹介──末岡洋子
フリーランスライター。アットマーク・アイティの記者を経てフリーに。欧州のICT事情に明るく、モバイルのほかオープンソースやデジタル規制動向などもウォッチしている
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