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スイッチでデータセンターが変わる 第50回

データセンターで手間なし管理を実現

Brocade VDXが実現したのはFCで当たり前の技術

2011年02月07日 07時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp

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2月4日、ブロケードコミュニケーションズ システムズ(以下、ブロケード)は、データセンター向けスイッチの新製品である「Brocade VDX6720」(以下、VDX)のデモンストレーションを行なった。ここではL2のマルチパス、クラスタ化、トランキングなどデータセンターの現場で実用的な技術がいくつも披露された。

今すぐ動く!VCSの詳細

 VDXはブロケードのFCスイッチと旧ファウンドリーのEthernetスイッチの技術を統合した10GbE対応のデータセンタースイッチで、昨年発表された。いよいよ出荷が近づいたということで、最新ファームウェアを用いた今回のデモンストレーションになった。

デモンストレーションのためのVDXやサーバー群

 今回デモンストレーションが披露されたのはBrocade VCS(Virtual Cluster Switching)というクラスタ技術だ。VCSはL2レベルで冗長経路を構成する「Ethernet Fabric」、各スイッチを単一のファブリックとしてクラスタ化する「Distributed Intelligence」、ファブリックを統合管理するための「Logical Chassis」などの技術で構成されている。2012年にはDynamic Servicesが追加され、計4つの機能が提供される。今回は3台のVDXとVMwareの仮想マシンを用意し、データセンターテクノロジー部 部長の小宮崇博氏がEthernet FabricとDistributed Intelligenceの機能を披露した。

ブロケードコミュニケーションズ システムズ データセンターテクノロジー部 部長の小宮崇博氏

 1つ目のEthernet FabricはL2レベルで複数の経路を構成する技術で、TRILLというプロトコルをベースにしている。「(冗長経路でトラフィックを負荷分散する)イコールコストマルチパス(ECMP)をL2のEthernetレベルで実現する。そして、最大のメリットはこれが自動的に構成されるという点」(小宮氏)という特徴を持つ。

TRILLをベースにECMPを実現するEthernet Fabric

 こうしたECMPにおいてはTRILL(TRansparent Interconnection of Lots of Links)とSPB(Shortest Path Bridging)という2つのプロトコルがあるが、両者はフレームフォーマットが異なっているという。小宮氏は「TRILLは基本的にはルーティングと同じで、ホップごとに宛先・送信元が変わります。一方、SPBはMAC in MACなので、VLAN IDの消費が早いという弱点があります」と語る。

 次のDistributed Intelligenceは、ファブリック内の各スイッチでフォワーディング情報などを同期する技術。単一の物理スイッチが学習したMACアドレスを他のスイッチでも即座に同期される。そのため、スイッチやサーバーが追加されると、全スイッチが新規の接続を検知できる。

VDX間で連携し、ファブリックを自動構成する

 この機能が前提として、仮想マシンの移動を自動化するのがAMPP(Automatic Migration of Port Profiles)だ。従来、データセンターの管理者は各ポートに対してVLAN IDやQoSなどプロファイルを設定しておき、仮想マシンのMACアドレスと関連づけていた。しかし、VMwareのVMotionを使うと、仮想マシンが別の物理サーバーに移動するため、プロファイルをふり直す必要が出てくる。これを自動化するのがAMPPになる。「仮想マシンがどこに動いても、VLAN IDやポート属性やQoSなどのポートプロファイルが連携します」(小宮氏)という。

仮想マシンの移動にポートプロファイルを連携させるAMPPの動作概要

 さらに「Brocade ISL」という独自のトランキング技術も紹介された。複数の物理リンクを束ねるリンクアグリゲーションは帯域拡張や耐障害性の向上に寄与するが、Brocade ISLではフレーム単位でリンクを振り分けるので、帯域の利用効率が高いという。

VDXで構成されたファブリックは動く!

 デモンストレーションでは、3台のVDXを相互に接続し、ファブリックを構成。各スイッチ間のリンクは10Gbpsの1本とISLで束ねられた30Gbpsのトランクで結ばれている。このファブリックと仮想マシンの載ったVMwareサーバー2台と、iSCSIとFCoEのストレージがたすき掛けの冗長リンクで接続されている。小規模ながら、実際のデータセンターのネットワークにかなり近い。

デモンストレーションの構成図

 デモンストレーションでは、各VDX間のリンクをいったん切断した後、自動的にファブリックを構成する様子や、リンクを1箇所遮断させた後、他の経路にタイムラグなしで即座に切り替わる様子などが披露された。また、仮想マシンをVMotionで移動させた際でもきちんと同じポートプロファイルを適用するデモのほか、ISLの転送性能も測定され、なかなか本格的であった。GUIはまだ準備中とのことで、コマンドベースでのデモだったが、ステータスや設定自体も披露されたため、実物が動いている様子がよくわかった。

デモはシスコライクなコマンドラインでの設定で行なわれた

 小宮氏曰く、こうした技術の多くは実はFCスイッチで古くから使われていたもの。ブロケード自体はFCスイッチのコア技術を手掛けているからこそ、Ethernetにおいても、こうした新機能もいち早く実装できるという。今後、こうしたテクノロジーは各社から提供されることになるが、いち早く動作することを実証したイベントであった。

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