ディスプレーの「角度」と品質には疑問あり
VAIO YBは中身こそFusion APU採用で大きく変化したものの、外見は2010年末に発売された、Core i3採用の「VAIO Y」と大差ない。VAIO Yには、以前連載でも採り上げた13.3型モデルと、11.1型モデルの2ラインがあるが、VAIO YBは後者にあたる。ディスプレー解像度は1366×786ドットでアスペクト比16:9。最近の普及価格帯モデルでは一般的なものであり、特にサイズ的な不満は感じない。
むしろ感じたのは、ディスプレーの発色とボディーの構造の不満だ。
VAIO YBのディスプレーはあまり質がよくなく、発色が全体的に浅い。特に気になるのは上下視野角の狭さ。ちょっと上から見上げただけで、色がより浅く見える。また、表面の光沢加工がきつく、照り返しが目立ちやすいのも気になる。
このことはボディーの構造と明確に関わってくる。VAIO YBのディスプレーは、おおむね120度くらいしか開かない。それはまあいいのだが、膝の上に置くと「開き」が若干足りないことから、ディスプレーを上からのぞくような感じになってしまう。そのため、視野角の狭さがより感じやすくなってしまうわけだ。ディスプレーの部品をもう少し良質のものにするか、もう少しディスプレー部が「開く」ようにすれば解消できるのに、と思うと残念だ。
他方でディスプレーの開き具合をのぞけば、ボディーの作りは申し分ない。決してコストをかけた構造ではないが、シンプルかつ必要十分だ。タッチパッドの操作性も悪くない。USBポートが左右に用意されていることや、アナログRGB出力とHDMI出力が両方あることも、プラス評価としていい。
Fusion APUというプロセッサーは、低価格製品向け、特に個人向け製品に使うものとしては、かなりバランスのいいものといえそうだ。そのためVAIO YBも、とてもコストパフォーマンスの高い製品に仕上がっている。それだけに、ディスプレーにはもう少しだけ気をつかってほしかった。この点さえもう少しよければ、不満もなかったのだが……。
逆に言えば、このクラスの製品を狙っている方は、他社のFusion APU搭載機もチェックすることをお勧めしたい。ディスプレーは好みの分かれるパーツだけに、意外とこの製品がツボにはまる人と、そうでない人が分かれるのではないだろうか。
- お勧めする人
- ・動画がコマ落ちしないパソコンを、できるだけ低価格で探している人
- ・モバイルもAVもできる「万能低価格」商品が欲しい人
VPCYB19KJ の主な仕様 | |
---|---|
CPU | AMD E-350(1.6GHz) |
メモリー | 2GB |
グラフィックス | CPU内蔵 |
ディスプレー | 11.6型ワイド 1366×768ドット |
ストレージ | HDD 320GB |
光学ドライブ | 搭載せず |
無線通信機能 | IEEE 802.11b/g/n、Bluetooth 2.1 |
サイズ | 幅290×奥行き202.8×高さ25~31.5mm |
質量 | 約1.46kg |
バッテリー駆動時間 | 約6時間 |
OS | Windows 7 Home Premium 32bit版 |
予想実売価格 | 10万円前後 |
発売予定日 | 1月29日 |
筆者紹介─西田 宗千佳
1971年福井県生まれ。フリージャーナリスト。得意ジャンルは、パソコン・デジタルAV・家電、そしてネットワーク関連など「電気かデータが流れるもの全般」。主に取材記事と個人向け解説記事を担当。朝日新聞、読売新聞、アエラ、週刊東洋経済、月刊宝島、PCfan、YOMIURI PC、AVWatch、マイコミジャーナルなどに寄稿するほか、テレビ番組・雑誌などの監修も手がける。近著に、「美学vs.実利『チーム久夛良木』対任天堂の総力戦15年史」(講談社)、「クラウド・コンピューティング仕事術」「iPhone仕事術!」(朝日新聞出版)、「iPad vs.キンドル」(エンターブレイン)、「メイドインジャパンとiPad、どこが違う? 世界で勝てるデジタル家電」(朝日新聞出版)、「知らないとヤバイ! クラウドとプラットフォームでいま何が起きているのか?」(共著、徳間書店)。「電子書籍革命の真実 未来の本 本のミライ」(エンターブレイン)。
この連載の記事
-
第116回
PC
「VAIO Duo 13」—革新は形だけじゃない! 変形ハイエンドモバイルに込めた思い -
第115回
PC
ソニーの本気—Haswell世代でVAIOはどう変わったか? -
第114回
PC
渾身の「dynabook KIRA V832」はどう生まれたのか? -
第113回
PC
HPの合体タブレット「ENVY x2」は、大容量プロモデルで真価を発揮! -
第112回
PC
ソニー“3度目の正直”、「Xperia Tablet Z」の完成度を探る -
第111回
PC
15インチでモバイル! 「LaVie X」の薄さに秘められた魅力 -
第110回
PC
フルHD版「XPS 13」はお買い得ウルトラブック!? -
第109回
デジタル
ThinkPad Tablet 2は「Windows 8タブレット」の決定打か? -
第108回
デジタル
今後のPCは?成長市場はどこ? レノボ2013年の戦略を聞く -
第107回
PC
Windows 8とiPadがもたらす変化 2012年のモバイルPC総集編 -
第106回
PC
Clover Trailの実力は? Windows 8版ARROWS Tabをチェック - この連載の一覧へ