やることをやれば
会社のPCで何をしても構わない!?
一方でPCを大量一括購入する企業もある。外資系企業や大規模なアウトソーシング系企業、コンピューター専門学校を始めとした教育機関だ。こうした企業/教育機関でよく見るメーカーは、HPやレノボ(Thinkブランド)、DELLといった外資系メーカーのものばかり。
大量購入すれば企業が古くなったPCを中古PCショップに大量売却してもよさそうなものだが、中国の中古PC市場はあるにはあるものの、あまりそういった中古商品は見たことがない。
過去に当連載で「AMDとNVIDIAが中国市場でそれぞれ目指す異なる道」という記事を掲載し、ネットカフェ市場がPCメーカーにとって魅力的な市場であり、パーツメーカーが営業に東奔西走していることを紹介したが、ビジネスPC市場に関してはこうした話をとんと聞かない。
それには「中小企業が多い」「従業員にはローエンドPCで構わない」「でも経営者や管理職は好きなメンツPCが欲しい」という背景があるのだ。
ところで、会社内では従業員はPCで何をしようと自由なようだ。USBポートを利用してのMP3プレーヤーの充電はもちろん、会社で音楽ファイルなどのコンテンツをダウンロードし、USBメモリーを介して家に持って帰ったり、逆に家のコンテンツを会社に持ってきたりするのは当たり前。
業務に関係ないプライベートなサイトを見たり、チャットソフト「QQ」を利用したり、沿岸部ではSNSサイトを利用することはもちろんのこと、主に男性社員はFlashのゲームで遊び(専用ソフトをインストールしなければいけないオンラインゲームを遊んでいる人を何度も見たことがある)、主に女性社員はオンラインショッピングを楽しむ。
オンラインショッピングは似たような所得の同僚が集まり、少しでも安く買おうと同じショップでまとめて買い、送料を折半しようとするため、特に盛り上がる。
基本的にやることをやればお咎めはなく、やることをさえやらなくても咎めない役所もあるが、ごく一部の地域の役所や教育現場で業務以外のPC利用を禁じるルールが発布(名称は各地により異なる)されている。
各地のルールの発布時間は、最高で数年の差があるが、いずれも切り貼りしたようなそっくりな文章であるのが中国らしい。各地のルールで共通して最も禁止されているのが「勤務時間中のオンライン株取引」で、続いて「チャット」「麻雀などのゲーム」「映画視聴」を禁止している。裏を返せば職場でこうした利用が多々あるというわけだ。
QQこそ様々なプラットフォーム向けにリリースされているが、人気のオンラインショッピングやオンラインバンキングを利用するにはプラグインや専用ソフトが必要になる。
QQにしても使い慣れているWindows版が一番喜ばれる。前回「2011年の中国PC市場を予想する」という記事でも書いたが、中国人にとってWindowsを搭載しないデバイスは魅力がなく、やはり職場にWindowsを搭載したPCがない限り、社員は満足しないのである。
山谷剛史(やまやたけし)
フリーランスライター。中国などアジア地域を中心とした海外IT事情に強い。統計に頼らず現地人の目線で取材する手法で,一般ユーザーにもわかりやすいルポが好評。当サイト内で、ブログ「中国リアルIT事情」も絶賛更新中。最新著作は「新しい中国人~ネットで団結する若者たち」(ソフトバンク新書)
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