見た目や持ち物でメンツを保つ中国人
Googleや百度で「富人看不起窮人(金持ちは貧しい人を見下す)」というキーワードで検索すれば、Googleで13万件、百度では207万件もヒットし、掲示板やナレッジコミュニティサイトでは「なぜ金持ちは貧しい人を見下すのか」という質問と回答のやりとりが、多数確認できる。
現在日本でも格差社会化していると言われているが、一方でデートに軽自動車を使っても問題ない風潮となったり、ITベンチャーの社長がラフな格好で人前に出るなど、成金が金をばらまいていたバブル時代の人々やその行為が時代錯誤に捉えられる風潮となった。人を見た目や所持金、所持するモノで露骨に見下すような習慣はない。
逆に、中国では露骨なまでに見下す習慣がある。都市部の住民は農村部の住民や出稼ぎ労働者を露骨に見下し、大卒者は高卒者・中卒者を見下し、経営者は労働者を見下す。上海人は上海人以外の中国本土の人々を見下す一方、日本人には媚び、香港人は中国本土の人々を見下す。この辺は中国在住経験のある日本人ならば、肌で感じるのではないだろうか。
中国では、見下されればメンツが立たないばかりか、仕事にもありつけないことがあるし、友人や恋人にめぐり会えなくなることもザラだ。中国の私企業や公務員の上層部はもちろん、一流企業・外資企業の社員は(日本車を含む)高価な外国車で移動し、自らのステータスの高さをアピールし、周囲を蔑む(逆に、今夏茨城空港に就航した春秋航空の社長は、公共交通通勤でカップ麺を食にするなど中国人らしからぬ行動が目立ち、知る人ぞ知る人となった)。
道を歩き、路線バスを使いこなす普通の労働者も、携えるガジェットについてはできる限り高価なものを持って、つま先立ちをしてでもステータスが低くないことをアピールする。人に見られる可能性があるものはメンツが絡む反面、人に見られない自宅のデスクトップPCは無骨なタワー型でも構わない。
余裕のある出稼ぎ労働者は最安値の携帯電話でなく、給料の2倍も3倍もする携帯電話を購入し、都市部の住民はネットブックを買わず月収以上のノートPCを購入する。比較的恵まれた人のみが利用する空港では、フルキーボードの携帯電話ユーザーや、高級PCの代名詞「ThinkPad」を持つ割合が高く、内陸奥地でも観光地に行けば行くほどデジタル一眼レフユーザーや、「iPhone」「BlackBerry」といったスマートフォンユーザーの多さが目立つ。
5年前はそんなに“格差”がなかった!?
今の中国では携えるガジェットで人となりを判断し、対する人からの態度や仕事の成功具合が変化する「中国ガジェット格差社会」ではあるが、それが昔からあったかと言うと疑問符が付く。
5年以上前にはガジェット格差はなく、私企業や公務員の上層部を除けば誰もが自作のデスクトップPCを利用し、数MBのUSBメモリーでデータを運搬し、アナログモデムを駆使し、CDプレーヤーで音楽を聴いていた。上海だろうと内陸部だろうと、ホワイトカラーが所有するIT製品はほぼ一様だった。
月刊アスキー2004年1月号に「中国と日本のPC価格徹底比較」という筆者が執筆した記事がある。1月号というと前年の12月発売なので、実際の調査・執筆作業はもうちょっと前になるのだが、そのときの調査によれば、CPUはPentium 4ないしPentium Mが全盛の2003年末時点で、ノートPCの最安値が10万円、デスクトップPCが7万円、最多販売価格帯はノートPCが15万円、デスクトップPCが10万円となっていた。
今ではデスクトップPCは2~3万円で、ネットブックも2~3万円。ノートPCは5万円で買える一方で、所得と食品や日用品などの物価は当時と比較して倍増している。
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