現在主流の無線LAN規格には、IEEE802.11a/b/gの3種がある。このうち11b/gは同じ2.4GHz帯を使用しており、同じチャネルで使うと干渉が起こるとされる。そこで、この干渉がスループットにどのような影響を及ぼすのか検証した。
同じ帯域を使う複数の無線LAN規格
無線LANの普及が始まった2001年前後には、11MbpsのIEEE802.11bが主流だったが、現在では54Mbpsを実現した11gへ移行している。そのため、オフィスなどで無線LANの導入を行なった場合、同じ2.4GHz帯を使う11bと11gの混在環境になるケースが増えている。このような場合、11gと11bを同じチャネルで同時に使うのはタブーとされており、隣り合ったアクセスポイントは離れたチャネルに設定するのが一般的だ。
なぜ、タブーとされているのか。そもそも無線LANでは、他のホストが通信している間は通信を待ち、そのホストの通信が終了してから通信を開始するという仕組みがある。これを「CSMA/CA(Carrier Sense Multiple Access/Collision Avoidance)」と呼ぶ。しかし、11b/gの混在環境ではお互いの通信方式が異なるため、この伝送を安定させる仕組みがうまく働かない。また11bには、同じ周波数帯を使う11gが通信中であることを感知できないという問題もある。そのため、11gが通信中であっても、11bが通信を始めてしまうことがある。こうした結果、11bと11gが同じチャネルで混在している環境では、信号のふくそうが起こり、通信速度の低下を引き起こすとされているのだ。
複数のアクセスポイントを使用する際には、14に分割された無線チャネルをずらす必要があることは、よく知られている。だが、各チャネルは、それぞれの中心帯域から1チャネル分の帯域幅だけを使って通信するわけではなく、中心周波数から22MHz分、5チャネル分の帯域を使用する(図1)。そのため、干渉をさけるには前後4チャネルは空けておく必要があるといわれる。
同じチャネルだと影響が?
だが、本当にチャネルが重なると速度低下が生じるのだろうか。実験で確かめてみた。
最初の実験では、11gと11bの干渉について調べてみた。まず、11bを使っていない状態で、1chに設定した11gのアクセスポイントとクライアント間の伝送速度を測定した。その結果が図2のAである。続いて、同じ1chに設定した11bのアクセスポイントとクライアントを11gのアクセスポイント/クライアントの近くに設置した。ただしこの段階では、ファイル転送といった11bの通信が生じる作業は行なわない。この11bの通信がない状態で測定した11gの速度が、図2のBだ。
図2のAと比べると、Bは微弱な減衰しか起きていない。つまり、同じチャネルの11b/gが混在していても、11bで通信していない状況であれば、11gへの影響はほとんどないことが分かる。
それでは、11b側も頻繁に通信を行なっている状況ではどうなるのか。11bのアクセスポイント側にもFTPサーバーを用意し、11bのクライアントが常時ファイルをダウンロードしている状況を作り、この環境で近くの11gの速度を測定した。その結果が図2の1であり、図2のBと比べるとわずかながら速度は低下している。やはり干渉の影響はあるようだ。
ここまでの結果をまとめると、同じチャネルのアクセスポイントを混在させた場合、影響は少ないものの、速度は「11gのみ」がもっとも速く、続いて「11b混在(11bでのファイル転送なし)」、「11b混在(11bでのファイル転送あり)」という順番になることがわかった。
(次ページ、「異なるチャネルでも干渉する?」に続く)
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