自然な3D再生がターゲット
── 開発時にはAQUOSクアトロンの部隊とも連携してきたのでしょうか。
松浦 「AQUOSブルーレイには、以前からファミリンク(HDMI連携機能)とAQUOS純モード(液晶パネルに最適な映像を出力する機能)が搭載されており、(液晶テレビの部隊とは)常に連携して開発を進めてきました。クアトロンだから特別ということはありません。
ただし、四原色という新しい技術を採用したクアトロンは、色のコンセプトも従来と変わってきます。そのなかで『四原色のパフォーマンスを一番出すためにどうするか、しかも3Dで』──という部分には頭を悩ませました。
BDの3D規格は(放送とは異なり)“サイドバイサイド”ではなく“フルHD 3D”ですから、大画面でも解像度を落とさず表示できます。クアトロンは、それを最大限引き出せるテレビとして、新しいAQUOSブルーレイは、それを引き出すレコーダーとして、しっかり作り込んでいます」
── 3Dで画質を作り込むにあたって、2Dと比べて特別なチューニングが行われているのでしょうか。
松浦 「自然な3D映像の再現、ということを第一に考えています。ディテールの表現。色彩の表現。立体感。そしてそこからくる迫力。これらが損なわれたら、3Dの感動はなくなってしまいます。
映画館で2Dより3Dが支持される理由は、見た後の感動とか、リアル感とか、そういうものだと思います。細かいディティールの表現は、3Dになって“より問われる”と言っていいでしょう。2Dと比べて色が違うとか、ディテール感が違ったりしてはいけない、そういう考え方で製品を作っています」
── 私自身、昨年のアバター以来、様々な作品を3Dで見てきました。劇場版3D映画の表現も、全体として落ち着いてきたな、と感じています。
松浦 「かつての3D映画は、視覚効果を狙った飛び出し感に重点を置いていた印象があります。しかし、現在では奥に引き、より広がり感を感じさせる表現が重視されています。特に映像をボカし、リアルさを追求していくための表現が増えている。
映像を前に飛び出させるのは比較的簡単な作業です。しかし奥に行くためには、質感が求められる。我々は常にオリジナル・ソース(マスター)に対する忠実性を考えて製品を開発していますが、このソース本来のディティールをどれだけ落とさずに再現するか、というのは難しい課題だと感じています。