シャープは20日、同社が開発した電子書籍フォーマット「XMDF」の次世代版の開発を発表するとともに、これを軸とした電子書籍事業への参入を発表した。
XMDFはシャープが独自に開発した電子書籍用フォーマットで、携帯電話向け電子書籍や、同社の電子辞書、モバイルインターネット端末などで利用されている。独自開発とは言え、IEC(国際電気標準会議)の標準規格(IEC62448 Ed.2 Annex B)にも採用されている。新たに発表された「次世代XMDF」はこれを発展させ、テキストや画像だけでなく動画や音声なども含めたデジタルコンテンツを制作可能にするという。
次世代XMDFベースのコンテンツは、スマートフォンから小型の専用端末、さらにはテレビ上での表示も視野に入れた「ワンソースマルチユース」を特徴としているという。既存の雑誌・書籍制作から電子版の作成を容易にするために、データ変換やオーサリングの自動化システムも用意するようだ。動画を含めたインタラクティブなコンテンツには、Flash 10ベースのコンテンツも利用できるという。
またシャープでは、次世代XMDFに対応したタブレット型の電子書籍ビューワー端末も年内に発売する。端末に関する具体的な情報はほとんど公開されなかったが、小型のものが5.5型、大型のものは10.8型のディスプレーを備える点だけは明らかにされた。端末に対する電子書籍の配信手段等も、今回の発表では明かされていない。ビジネスの具体的な話は、端末の正式発表を待つことになりそうだ。
パートナー企業としては、国内の大手出版社や新聞社、印刷、取次会社などの名前があがっている。海外での展開も視野に入れているようだ。ただし、具体的に「どこが何を出す」という段階の話はなく、唯一スライドの中で、毎日新聞社が「日刊の特別編集版『Mainichi iTimes』を中心に」新端末に適したコンテンツを配信すると表明したのみに止まる。
今回の発表はどちらかと言えば、シャープが次世代XMDFを開発し、それをベースに電子書籍ビジネスに参入するという、いわば決意表明と言える。そのため、具体的にシャープ自身がこの事業で、どのようなビジネスモデルを組み立てているのかについては明確にされていない。年内に予定されている端末の発表時には、具体的な戦略が明かされるであろうから、それを期待したい。