ストレージ装置を使えば、テープでは不可能だった高速バックアップ/リカバリが可能になる。しかも管理者の手間も軽減されるとよいことずくめである。今回は、それらを実現するディスクバックアップの技法を紹介する。
データの保存先として、テープではなくHDDを使う「ディスクバックアップ」は、20年ほど前に汎用機システムで導入がはじまった。最初のディスクバックアップのシステムは「仮想テープライブラリ」と呼ばれ、従来のバックアップソフトを使って、ストレージ装置をテープライブラリ装置に見立てた「仮想テープライブラリ」に、バックアップするものだった。
これにより、多くの管理者が「テープ管理の煩わしさ」から解放され、バックアップやリストアの時間も短くなった。しかし、新たに「バックアップ処理中にサーバーのパフォーマンスが低下する」という問題点が生じるとともに、「リストアに時間がかかる」という問題点は完全には解決しなかった。
21世紀に入りストレージ装置の大容量化と高性能化が進むにつれて、新たなディスクバックアップの技法が続々と登場した。これにより、前回述べた管理者の理想
- バックアップ処理が一瞬で完了する
- リカバリ処理も一瞬で完了する
- それが自動的に実行され管理者の手を煩わせない
の実現に大きく近づいた。今回は、そういったディスクバックアップの代表的な技法を紹介する。
レプリケーション
レプリケーション(Replication)は、ディスクボリュームやデータベースの完全な複製をリアルタイムで作成する技法であり、ミラーリングやクローニングとも呼ばれる。レプリケーションには、
- 本番データと同じサーバールームやデータセンター内に複製データを作成する手法(ローカルレプリケーション)
- 本番データから離れた拠点に複製データを作成する手法(リモートレプリケーション)
の2種類がある。ローカルレプリケーションは障害時のクイックリカバリを主たる目的とし、リモートレプリケーションは災害時のディザスタリカバリ(Disaster Recovery)を主たる目的とする。いずれにせよ、障害あるいは災害などで本番用サーバーやストレージ装置が使用できなくなっても、その時点の最新状態がレプリケーション先に複製されているため業務を継続できる。
ちなみに、レプリケーション先に直接アクセスすることができれば、リストア処理も不要になる。ローカルレプリケーションであれば、ストレージ装置側の操作で、アプリケーションサーバーに接続するボリュームを本番ボリュームから複製ボリュームに変更するだけで済む(図1)。
また、リモートレプリケーションであれば、クライアントからの接続先を切り替えるだけだ。これにより、リカバリ時間が大幅に短縮される。
レプリケーションにも問題点あり
以上がレプリケーションの仕組みとメリットだが、デメリットも存在する。それは、レプリケーションでは本番データの完全な複製を作成するため、本番データ量と論理的に同じだけのディスク容量が必要になってしまう点だ。
また、レプリケーションしているだけでは、バックアップを完全に代替することはできない。「データを誤って、あるいは故意に、更新または削除した」という人為的な事故が生じた場合にも、機械的にリアルタイムでレプリケーションするため、本番データにも複製データにも、リカバリのための元データが残らないからだ。つまり、単純なレプリケーションは、人為的なミスのリカバリには対応できないのである。
バックアップ処理では、このような事態に備えて「静止点」とか「リカバリポイント(復元点)」が明らかなデータを取得し保存しておく必要がある。
(次ページ、「ある時点を再現するスナップショット」に続く)
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