Microsoft Office 2010関連製品群 定例記者説明会 第3回レポート
Office 2010はホワイトペーパーとビデオで導入支援
2010年03月30日 09時30分更新
3月29日、マイクロソフトは第3回「Microsoft Office 2010 関連製品群」定例記者説明会を開催し、企業向けのOffice 2010導入支援策を紹介。会場では、導入の障壁となる、マクロやレイアウトの互換性検証、ユーザーへのトレーニング、そして導入展開の作業の問題を解消するための方策が紹介された。
マイクロソフトでは、改良されたリボンUI(ユーザーインターフェイス)の採用などにより、Office 2010を導入すれば生産性は向上するとしている。しかし、問題となるのが、その導入コストだ。たとえば、PCが約2万台ある金融機関がOfficeを更新するには、3億円ものコストがかかるという試算があるという。
なぜ、移行に莫大なコストがかかるのか。マイクロソフトの調査によると、それには
- 互換性検証
- トレーニング
- 導入・展開
という3つの課題があるという。今回の説明会で明らかにされたのは、この3つの課題を解決するための、製品の改善・改良と新たな施策だ。
4社連合で互換性を向上
互換性検証は、これまで社内で使用してきた文書のマクロは動くか、レイアウトが崩れないかといった確認作業だ。Wordで作成した業務システムのマクロの動作がおかしくなったとか、Excelで作成した申請書類のフォーマットがおかしくなったといった話は、Officeをバージョンアップにつきものだ。
こうした互換性問題が発生する理由として松田氏が挙げたのが、「製品の不具合(バグ)」と「アーキテクチャの変更に伴う問題」の2つだ。当然、バグについては発見次第修正を行なっている。しかし、アーキテクチャに関する問題は修正が難しいのだという。
たとえば、Excelはバージョンアップによって、1つのワークシートで扱えるセルの数が拡大された。これにより、Excel 2003では動作していたセルの数を数えるマクロは、Excel 2007/2010ではセルの数が多すぎてオーバーフローが生じてしまうという。逆に、Excel 2007の表をExcel 2003に貼り付けると、2003には表が大きすぎてエラーとなるケースもあるらしい。
もちろん、マイクロソフトも手をこまねいているわけではない。ユーザーからファイルをもらって一緒に検証を行ない、「問題点を開発チームに上げる」、「ユーザーに解決方法を提示する」といった取り組みを行なってきている。しかし、Office 2007まではマイクロソフト自身による作業であり、「Excelをワープロ代わりに利用する」といったマイクロソフトの想定外の使い方までは対処しきれなかった。そこで、新たな施策として2009年9月に立ち上げたのが「Office導入支援センター」だ。
Office導入支援センターは、大塚商会とCSK Win テクノロジ、日本システムディベロップメント(NDS)という「Officeの導入に関するスペシャリスト」3社とマイクロソフトが共同で運営する組織で、Office 2010の互換性に関する問題を洗い出す。こうした取り組みにより、Office 2003からOffice 2010への移行で発生する問題は、Office 2007への移行と比べて、マクロの互換性で約60%の削減、レイアウトの互換性では約22%の削減となった。レイアウト互換性の問題削減率が少ないようだが、重要度の高い問題は残り14個に過ぎず、それ以外に大きな問題は確認されていないという。また、以上はOffice 2010のRC(Release Candidate、製品候補)版による実績であり、製品版では互換性の問題はさらに解消するだろうとのことだ。
加えてOffice導入支援センターでは、蓄積された互換性に関するノウハウをもとに、互換性検証の工数と削減させる独自ツールの提供、マクロやレイアウトの互換性に関するホワイトペーパーの公開とそれを集約したポータルサイトの構築を行なうという。
実は、ホワイトペーパーの公開は、Office 2007でも行なっていた。しかし、マイクロソフト社内で検証した結果だけに基づいており、現場のニーズとは異なることがあったという。しかも、提供はOffice 2007出荷の半年後になってしまっていた。Office 2007では、この点も反省。製品出荷後60日以内にホワイトペーパーを提供する予定だという。
(次ページ、「リボンUI改善と無償コンテンツでトレーニングコストを削減」に続く)