マイクロソフトは、同社のITコンサルティングサービス「ITAP」(IT Architecture & Planning)を、クラウド戦略「S+S」(Software Plus Service)に適応させた「ITAP for S+S」の提供を、3月1日より開始する。
ITAP S+Sによって、マイクロソフトのクラウド基盤である「Microsoft Windows Azure」や、企業向けのオンラインサービス「Microsoft Business Productivity Online Suite」(BPOS)などを取り入れた、オンプレミスと組み合わせたシステム構築を最適な形で実現できるとしている。
マイクロソフト エンタープライズサービス コンサルティング サービス統括本部 業務執行役員 統括本部長の畑義和氏は、「企業がクラウドを導入しようという際に、クラウドの導入そのものが目的になってしまい、部分最適に陥りがち。それで周辺部分での開発が必要になったり利便性が下がってしまう可能性がある」と語る。要は、ITのシステム全体を俯瞰したうえでクラウド化すべきかどうかを精査して、ITアーキテクチャの策定や計画立案をすべきというわけだ。
そこでITAP S+Sでは、
- 計画フェーズ
- 設計フェーズ
- 導入・移行フェーズ
- 運用フェーズ
と、ITライフサイクル全般を4つのフェーズに分けて全体最適を図る。
一見オンプレミスでの開発と変わらないように見えるが、従来は導入以降のフェーズに長い期間をとっていたものを、クラウドの場合はその前のフェーズ(導入・移行フェーズ)にて本番に近い環境でテストができるといった違いのほか、キャパシティプランニングなどを意識する必要が少ないといった特徴も見受けられる。
コンシューマ向け大規模サービスで
培ったノウハウと設備
ITAP S+Sの強みは、マイクロソフトが今まで培ってきたノウハウをつぎ込んだ企画策定と構築にある。今さら言うまでもないが、マイクロソフトはコンシューマ向けのHotMailやWindows Live Messengerなど、10年以上コンシューマー向けの大規模サービスを提供しており、それらを支えるデータセンターも運用している。さらにグローバル企業ならではの社内システムも構築運用する。ITAP for S+Sでは、こうしたバックグラウンドからエッセンスを取り込んだサービスを展開するという。
たとえば課題分析では、実際に顧客企業のビジネス分析をして、業務ドメイン(領域)を分割・整理。さらに各ビジネスがクラウドに最適かどうかを、8項目5段階で評価して色づけし、クラウド化の判断を下す。
クラウド化すべきかどうかは、業務そのものの成熟度や定型度、そしてそれを支えるITのマジョリティが勘案されるという。さらに、導入効果の分析を行ない、企業のビジョンにフィットしているかどうかを判断し、IT全体のロードマップ=クラウド導入計画を策定するが、こうした作業にも上記したエッセンスが投入されているというわけだ。
コンサルティングも、3つの層に分かれて入念に行なわれる。
「ビジネス・サービスレイヤ」は前述したビジネス分析をする層で、ほかにもセキュリティ要件や定義を行なう「セキュリティレイヤ」、実際に実装して運用を行なう「クラウド実装・運用レイヤ」など、ビジネス最適から危険性の検知、実際の運用までをトータルにサポートするのが特徴だ。
★
「日本はクラウドに対するニーズは高いが、サービスレベルへの期待や要求度も高い」と畑氏は述べる。こうした状況の中で、マイクロソフトは現在50名のS+S関連サービス人員を、2011年6月末までに400名に増強し、今後3年間でS+S関連サービスを300プロジェクト受注する目標だという。価格は約9週間からの行程で、840万円から。