2月12日、デルは同社が2009年7月に発表した「Dell PAN System」についての勉強会を開催した。プライベートクラウドのインフラ基盤と銘打った同社の戦略製品だが、発売から約半年が経ち、ようやくユーザーも見えてきたようだ。
オープン系の技術で組み上げた
デルのプライベートクラウド基盤
「現在のデータセンターのコスト構造では、メンテナンス向け投資のうち、人的コストが50%を占めている。インフラストラクチャが複雑すぎて、運用コストが増大しているためだ」。デルの馬場健太郎氏は現状のデータセンターの課題についてこう語る。これに対して「Efficient Enterprise」のビジョンに従い、シンプル化・標準化・自動化を推進していくのがデルの戦略。そして、そのための選択肢の1つがDell PAN Systemだ。
DELL PAN Systemはデルのサーバー(ブレードサーバーとラックマウント型)とストレージ、イージェネラの「PAN Manager」を組みあわせ、プライベートクラウド用のインフラ基盤としてパッケージ化したもの。「UNIXサーバーを持たない弊社が、オープンな技術をベースに組み上げたソリューション」(馬橋氏)。PANはProcessing Network Areaの略で、PAN ManagerではCPUとメモリ、ネットワーク、ストレージを抽象化し、コンピューティングリソースをプール化する。これにより、利用するアプリケーションに必要なリソースを定義し、物理サーバーや仮想サーバーを随時構築して、サービスとして提供できる。
イージェネラはこのPAN Managerを専用ハードウェアに組み込んで提供しているが、デルはイージェネラからOEM供給を受けたPAN Managerを同社の製品と組みあわせ、「DELL PAN System」として2009年から提供している。
「発表後100社近くのお客さまを訪問させていただいたが、すでにクラウド推進事業部などを作っているところもあり、システム管理やOS、ハードウェアなどを標準化し、全社としてインフラをサービス化していこうという動きは出ている」(馬場氏)とのことで、プライベートクラウド導入の萌芽はすでに見られるとのこと。
こうしたモデルを実現した事例としては、昨年の発表会でも紹介されたイージェネラの顧客でもあるパナソニック電工インフォメーションシステムズである。同社はPAN Managerをベースにサーバーの統合化を進め、人件費の削減、サーバー構築時間の短縮化、待機サーバー削減などを実現したという。また、1月には新日鉄ソリューションズがPAN Manager、Dell PAN Systemを利用したクラウド基盤構築のサービスを開始した。
Dell PAN Systemは本当に簡単か?
プレゼンのなかで繰り返しアピールされたのは、箱を出してすぐ使えるターンキーソリューションであること。「とにかくシンプルですぐに利用できる」という点が強調された。当然ながら、それは本当か?という疑問が出てくる。
この疑問を解消するため、馬場氏は専用サーバーのホスティング事業での利用というシナリオで、いくつかのデモを披露した。
最初は物理サーバーのプロビジョニング。Dell PAN SystemはPAN Managerにより仮想マシンだけではなく、物理マシンの構築もいち早くできるため、それを見せようというものだ。Webブラウザベースのツールを開くと、PAN Managerが起動する。そこから「LPAN」というリソースのプールからブレード、ディスク、スイッチ、ネットワークなどを組みあわせるプロビジョニング作業を行なう。あとは仮想メディアからOSのイメージをインストールすれば、サーバーが利用可能になる。手順はきわめて簡単だ。
また、単一のサーバーから複数サーバーのクラスタ構成に変更したり、サーバースペック自体を再定義したり、仮想サーバーを構築したり、といった作業もGUIツール上から行なえる。PAN Manager自体もイージュネラ時代から豊富な実績を持っているため、GUIもこなれている印象を受けた。「他社はハイパーバイザーや管理ソフトを複数組みあわせる必要があるが、DELL PAN SystemはPAN Manager1つで管理できる」(馬橋氏)とのことで、寄せ集めになりがちなクラウド向け製品とは一線を画している。
こうしたDell PAN Systemの顧客として、「1つはキャリアやデータセンター業者がを使って、ビジネスとして提供するパターン。もう1つはパナソニック電工インフォメーションシステムズ様のように大手の情報システム子会社が、顧客に対して提供するパターン」などを想定しているという。今後は実際に使っているユーザーの声などが求められることになる。