P2Pガサ入れから見える、中国産コンテンツの「自信」
P2Pを狙いうちすることで、中国政府にとってよくないコンテンツが流れなくなると同時に、海賊版コンテンツもP2P経由で見られなくなる。となれば主なネット利用者層である若者から確実に不満が出るし、反発が起きるかもしれない。動画共有サイトでは中国国内のコンテンツの版権はうるさくなったが、外国のコンテンツに関しては野放しである。
中国政府は政府批判、海賊版、ポルノなどのコンテンツを禁止しているが、P2Pや動画配信サイト・動画共有サイトでは、中国国外の海賊版コンテンツについてはテレビ最新話がすぐにアップされ、見られるようになっている。
一方でポルノコンテンツ、すなわち人気の日本のアダルトビデオ(詳しくは「中国人と日本のアダルトビデオの密な関係 前編」と「同 後編」)を参照)は、動画配信サイト・動画共有サイトではアップされずP2P経由のみで見られる、というより「見られた」。
つまりアダルトビデオは外国の海賊版コンテンツ以上に厳しくチェックしているのだろう。今回のP2Pへのガサ入れで、ネット上のアダルトビデオの主な供給源が断たれ、掲示板上では12月中旬に書き込まれた「どこでA片(アダルトビデオ)をダウンロードすればいいんだ!」という嘆き節が様々なサイトで確認できる。
P2Pを昨年末まで野放しにしていたのもネット利用者の反発を想定していたからではないだろうか。言い換えれば昨年末にP2Pにメスを入れたのは、中国国内コンテンツだけでもいける! という計算から動いたのではないか。
市民レベルで海賊版が蔓延していても、中国中央電視台(CCTV)などの放送局ではもう海賊版に依存することはないのではないか(今までは日本の海賊版が同局サイトで今以上に普通にアップされていた)。
中国のある研究者は、コンテンツ産業を「洗脳産業」と認識し、中国の人々が日本の(海賊版)コンテンツに依存していることを「日本に洗脳されている」と警鐘を鳴らす(関連サイト)くらいである。
中国が正規版を積極的に推進したところで、日本が中国のコンテンツ作成に1から10まで関わるとは思えない。成功した喜羊羊与灰太狼や三国演義のように、ストーリーや世界観は中国、売れるノウハウは日本という形になるのではないか。
山谷剛史(やまやたけし)
フリーランスライター。中国などアジア地域を中心とした海外IT事情に強い。統計に頼らず現地人の目線で取材する手法で,一般ユーザーにもわかりやすいルポが好評。当サイト内で、ブログ「中国リアルIT事情」も絶賛更新中。最新著作は「新しい中国人~ネットで団結する若者たち」(ソフトバンク新書)
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