人材のスキルを客観的に評価するフレームワーク「スキル標準」の普及啓蒙のため、目黒雅叙園にて「スキル標準ユーザーズカンファレンス2010」が開催された。
スキル標準といえば、ITスキルの評価体系「ITスキル標準」(関連記事)が有名だが、そのほか「組み込みスキル標準」や「情報システムユーザースキル標準」なども存在する。
今回のカンファレンスは、「スキル標準ユーザー協会」と「社団法人日本情報システム・ユーザー協会」による初の共同開催イベントとなっており、基調講演には経済産業省(以下、経産省) 商務情報政策局 情報処理振興課の安田篤氏が「高度IT人材育成の今後の方向性について」というテーマで登壇した。
安田氏は、「J-SaaS」の推進(関連記事)に携わっていることでも有名だ。ここでは、安田氏の基調講演から、経済産業省のIT人材への取り組みを見ていこう。
IT技術者はいつでも不足気味
IT技術者の需要は、経済的な状況もあり、昨年までは不足していたのだが、今年は一時的に増えている。とはいえ、経済が上向いてくれば、また不足するのは目に見えており、特にプロジェクトマネージャーやアプリケーションスペシャリストにおいては、不足感が強いのだという。
現在、日本のIT人材の育成に関しては、3つの課題に取り組んでいる。1つは、人材評価のメカニズムであり、2つ目は産学の連携、3番目は国際展開である。
人材評価のメカニズム
人材評価については、主に以下の4つの施策を「共通キャリア・スキルフレームワーク」に準拠・参照させる取り組みが進行中だ。
- 情報処理技術者試験
- ITスキル標準
- 組み込みスキル標準
- 情報システムユーザースキル標準
共通キャリア・スキルフレームワークというのは、各スキル標準の共通化できる知識項目や職種毎のレベル感について整合化を進めるためのメタモデルだとしている。情報処理技術者試験も、今年4月〜共通キャリア・スキルフレームワークに対応する形で実施されている。
このほか安田氏は、ITパスポートにも言及した。「読み・書き・そろばん・IT」として、ITを広く普及させることを主目的としたITパスポートだが、今年は試験職種を大きく見直したことで、7年ぶりに受験者が増加に転じた。また、従来はベンダーだけで使われていたITパスポートだが、ユーザーサイドでも使われるようになってきており、全国百数十の大学でも実施されているし、今年10月にはITパスポート試験普及協議会も発足し、産業界(経団連や商工会議など)や教育界が加わり、いかにツールとして使っていくかという方針の意見交換も行なわれているという。
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