バックアップを最適化するには?
3つ目の課題「バックアップの効率化」は、2つ目の課題「データ容量増加に対する対処」と密接に関係している。サーバ仮想化環境においては、従来のバックアップ手法を変える必要に迫られる場合がある。たとえば、深夜にLAN経由でバックアップを取得していたサーバを仮想化するケースを想定してみよう。図7に示すとおり、物理環境においてはそれぞれ個別にバックアップを取得することが可能であった。しかし、仮想化によりESXサーバに統合されると、ハードウェアリソースは共有されるため、バックアップ処理に必要なCPUリソースやネットワークリソースに競合が発生してしまう問題が起こる(図8)。
この課題については、本連載8回目で紹介した「Avamar」で解決できる。図9に示す通り、Avamarは仮想マシン上で重複除外(ブロックレベルの重複除外)を行なうことで、バックアップデータを削減するため、ネットワークに転送されるデータ容量が少なくなる。
さらに、バックアップサーバ側にバックアップ対象と同じデータが存在すれば、そのデータを転送しない。この先進的なAvamarの重複除外機能によるバックアップデータ全体の容量縮小により、ハードウェアコストを大幅に削減できる。また、システム管理者が得られるメリットは大きい。以下におもなメリットを列挙する。
- 日々のバックアップデータが最大1/500に削減できる
- バックアップ処理によるサーバのCPUリソース負荷が軽減され、安定した運用を維持できる
- バックアップジョブのスケジューリングが容易になる
- バックアップ時間の短縮により日中業務への影響を防止することができる
サーバの仮想化とストレージは併せて検討すべき
今回は、サーバ仮想化環境におけるストレージの課題と有効なソリューションについて解説したが、仮想化技術を用いてサーバ統合を計画する上で意外と見落とされがちなのがストレージの選定である。特に、仮想化技術やSANの構成を初めて導入する企業においては、ストレージの選定をすべてSIerに任せたり、予算の都合上安価なストレージを選択するケースが多く見られる。
ここで注意したいのは、ストレージの性能や機能がサーバの集約率や仮想化環境の拡張に影響することだ。安価なストレージを選定すると、必然的に集約できるサーバ台数が減り、仮想化の効果があまり得られないという結果に陥る可能性がある。そのため、サーバ仮想化によるITインフラのコスト削減を検討する際は、併せてストレージも慎重に選定すべきであろう。担当者自らが製品の特徴を見極めるために、ここで紹介したソリューションがヒントなれば幸いである。
次回は「ストレージの管理」について解説する。今回は紹介できなかったが、ストレージの管理も仮想化環境で大きな課題の1つとして挙げられているのだ。この仮想化環境における管理についても併せて解説したい。
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