効果がわかりやすい仮想プロビジョニング
ストレージ筐体を超えた仮想化と異なり、ストレージ筐体内の仮想化技術は、効果については限定的ではあるが企業ユーザーの多くが採用に積極的だ。その代表として、仮想プロビジョニング機能がある。
仮想プロビジョニングはシンプロビジョニング(Thin Provisioning)とも呼ばれ、ストレージが提供する論理ボリュームに書き込んだデータのみ内部で管理・保存し、ストレージ容量の利用効率向上を図る。たとえば、ある業務システムを新規に構築する場合、ストレージ容量のサイジングには往々にして安全を見越した余裕容量が付加される。エンドユーザーが要求した容量に対して、データベース設計者,サーバ管理者,ストレージ管理者といった具合に、それぞれ余裕を積んでいくと実際に必要なストレージ容量よりかなり多くの論理ボリュームをサーバにアサインすることになる(図7)。しかし、業務開始後の実際の容量使用率は往々にして低く、ストレージ使用率を下げコストを押し上げる大きな要因となっている。
それでは、仮想プロビジョニングの基本的な仕組みを説明しよう。ストレージは図8のように、サーバに対しては要求通りのサイズで論理(仮想)ボリュームを提供する。一方、ストレージは仮想ボリュームにアサインした容量を、初期はストレージ内部でアロケートせずに、サーバからの書き込み要求に応じて「チャンク」と呼ばれるあるサイズの固まり単位に、仮想ボリュームへアロケートする。この仕組みにより、サーバが書き込みを行なった容量のみストレージ内部の容量を消費することになり、「余裕」による無駄なストレージ容量を削減することが可能となる。
チャンクは、ストレージプールと呼ばれるRAID保護されたドライブのグループ内に、自動的に分散配置される。多くのストレージが、このプールを複数構成することが可能で、サービスレベルや部署・業務単位でプールを分けて利用するのが一般的だ。仮想プロビジョニング機能を使用する際は、サーバ側のデータベースやファイルシステムの構成に注意が必要だ。
たとえば、データベース用のデータファイルは、100GBのデータ領域を予約するために100GBの大きさのファイルを作成する。データベースへ登録したデータは、この100GBのファイル内に保存されるのだが、100GBのファイルを作成した時点で、仮想プロビジョニングを使用していたとしても、ストレージ側は100GBの容量をアロケートしてしまう。これでは、登録したデータ分のみ消費する仮想プロビジョニングのメリットが活かせないため、データファイルを動的に拡張するようなオプションを指定して作成する必要がある。
また、ファイルシステムのデフラグのような動作も、サーバがデータを再配置するためアロケートされる容量が増加する。このように、仮想プロビジョニングを利用する際は、ある程度サーバ側の動作を理解する必要がある。
今回は、ストレージ仮想化技術について、ストレージ仮想化エンジンと仮想プロビジョニングを中心に解説した。ドライブやRAID構成を隠ぺいした論理ボリュームを提供するストレージは、早い段階で仮想化を実現している一方、ストレージ筐体を超える仮想化製品については、技術的な課題もあり普及にはもう少し時間がかかりそうだ。その中で、今回解説した仮想プロビジョニングや前回紹介した仮想LUNによる筐体内のデータ移動は、これまでのストレージ技術をベースとしており、信頼性を重視しつつコスト削減を図る企業ユーザーにとって有用な機能である。
次回も仮想化を中心に、サーバ仮想化環境におけるストレージの役割や重要性について解説する。
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