先日、ある発表会でかなり腑に落ちない出来事があった。発表会用の資料が紙で配布されないのだ。確かに手元の資料には製品カタログはあるが、発表会で用いられるプレゼンテーションの印刷物が入っていない。
ペーパーレス=グリーンIT?
発表会の冒頭で広報の方は携帯電話をマナーモードにしてほしいといった説明とともに、「グリーンITを推進させる観点で、紙の資料は用意しておりません。後ほどメールにて配布させていただきます」という旨の案内が行なわれた。
「デジタル時代になに言っているんだ……」「あとから資料が来るんだったら、それでいいじゃないか」「大量のプレゼンテーションを印刷するのは、やっぱりもったいない」という意見もあるだろう。また、記者の方でも発表会の会場でノートPCで直接記事に起こしてしまう人も多い(私もたまにやる)ので、こうした場合は紙の資料は必要ないはずだ。
しかし、少なくとも私は大変に困った。記者の動きを見ればわかるが、発表会の記事を書くにあたっては、紙の資料は不可欠だ。講演者の話した内容をプレゼンテーションに合わせて、メモとして書き込んでいく。これは記事の執筆にあたって非常に重要で、特に更新の早いWeb媒体の記者の場合、録音した内容を聞く時間的な余裕がない。そうなると紙の資料が手元にないのは不便だ。また、紙の資料とノートPCがあれば、とりあえずオフラインの環境でも記事を書き進めることができる。メモは記事のスピードと品質をにぎっているといっても過言ではない。私から言わせると、資料を配付しないのは、記事は書いてくれるなと言われているに等しい。
ここまでの例はあまりないが、グリーンITを不思議な形で解釈しているベンダーは意外と多い。帰りがけに、ほかの媒体の記者の方に「紙の資料くれないってどういうことでしょうかね?」と愚痴ってみたら、「最近の発表会はそういうことも多いですよね」と半ばあきらめ顔であった。カラーでなくてもよい(カラー資料をモノクロで出力して見にくくなっている資料も多いので)。モノクロでよいので、ハンズアウトをきちんと用意してもらいたい、と思うのは私だけだろうか?
単に紙を減らせば、グリーンITに寄与するのか? 紙の利便性を考慮しないで、環境負荷の小ささのみを訴えるのは果たして正しいのか? 結局、相手を思いやることができるのかという話だと思うのだが……。いろいろ考えさせられた出来事であった。
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