大逆転の末、ポイント圏内に滑り込む!
約2時間のレースのうち1時間が過ぎ、ライバルたちはほとんどピットインを済ませる中、ミクZ4は番場選手の頑張りでさらに走る。だが、さすがに路面温度の上昇や路面の凹凸によるタイヤの消耗が顕著にタイムに現れはじめ、40周目についにミクZ4はピットイン。田ヶ原選手にドライバーチェンジ、タイヤ交換、給油となった。このときの様子を番場選手は「タイヤもタレてきてたんですが、それよりも燃料が心配だった」と語っている。ミクZ4の今後の課題は燃費となるか?
ピットイン前は5位だったが、ピットアウトする頃には14位までポジションを落とす。だが、そこはベテラン、かつオートポリスでの優勝経験もある田ヶ原選手。続々とアクシデントで順位を落とす上位陣を巧みにかわし、なんと12位まで上昇。最後の最後で1台抜いて、最終的には11位でチェッカーを受けたのだった。
11位でも過去最高位なのだが、このままだと「まあ頑張ったよね」という評価で終わっただろう。だが、最後まで何があるかわからないのがレースの面白いところ。なんと10位の「#66 triple a ムルシェ RG-1」が「危険なドライブ行為」違反により30秒のタイム加算ペナルティを受け、ミクZ4と18秒差だったために順位は逆転、正式結果は10位になったのだ! これにより、チームポイントを2ポイント、ドライバーズポイントを両選手が1ポイントずつ獲得したのだった。上位陣に何かが起こったとき、順位を上げられる位置にいるということも、実力のうちであり、ミクZ4がコンペティティブになってきた証でもある。
「10位と11位は、大差ないように見えるけど、実際は大きく違う」と鈴木監督が言うように、ベスト10 、トップ10に入ったという結果と、11位で完走という結果はポイントの有無だけではなく、ファンからのイメージもチームのモチベーションも変わってくるだろう。10位に入ったという事実は、チームを確実に強くする。それくらい価値のある勝利なのだ。今までは一歩一歩の前進だったが、10歩くらい一気にステップアップしたように思える。この結果を弾みに、最終戦もてぎではさらに上位を狙えるのではなかろうか。もてぎでの予選はスーパーラップではなく、夏の鈴鹿のように下位のマシンから外れていくノックダウン形式なので、できるだけ最後まで生き残れるように、応援シートの皆さんは精一杯応援してほしい。
クルマもチームも1から作り始めたプライベーターが、たったの1年でこのような結果を出せるまで成長したのは、Z4のポテンシャル、優秀なドライバーやメカニックの働きもあるが、間違いなく個人スポンサーのような熱心なファンのおかげだ。何度も書いているが、筆者としては結果が出るのは3シーズン目からだと思っていた。参戦は去年からだが、実質フル参戦は今年が1シーズン目だということを考えると、ワークスチームにも匹敵するくらいの成長っぷりだ。
SUPER GTのパンフレットには毎回「痛車としての話題が先行し云々」と書かれていたが、次戦からはその言い回しは消えるだろう。ファンあってのチーム、レースだということがよくわかる。クルマ離れ、モータースポーツ離れが進む昨今、このチームの存在は再び観客を呼び戻すためのひとつの見本だと言えよう。ファンが何を求め、何に喜び、そして何のために決して安くはない観戦費と交通費を払って見に来てくれるのか。そのヒントがこのチームにはある。
さあ、ついに11月の最終戦もてぎのみとなった。最終戦はウェイトハンディがなくなるため、上位を狙うのは格段に難しくなるが、それでもミクZ4なら、ミクZ4ならなんとかしてくれる! はず!
(次ページへ続く)
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