10月5日、HPはクラウド専用端末として「HP t5730wi Internet Appliance」を発表した。1990年代後半のNC(Network Computer)を彷彿させるWebアプリケーションの利用に特化した端末となっている。
PCのコンポーネントが
分離された世界
発表会の冒頭、クラウドへの取り組みを説明した米ヒューレット・パッカードのバイスプレジデントであるデビッド・ホワイト氏は、現在のHPの状態を、「クラウドの種を蒔いている状態(Seeding the Cloud)」と表現した。サーバや仮想化の分野では積極的にクラウドの構築等に製品を出しているが、今後はデスクトップの仮想化に注目が集まる。これに対し、現在のPCはユーザーインターフェイスや設定、アプリケーション、OSなどをハードウェアに載せられている。これは例えれば、1つの果物として完結している状態。しかし、クラウドの世界では前述した要素が分離しつつあり、それらを組み合わせて1つのPC機能を実現していくことになる。これは複数の果実を組み合わせた「フルーツサラダ」というモデルに例えられるという。
そして、今後のシンクライアントは、用途に特化したローエンド製品と、よりリッチで柔軟なハイエンド端末に特化していくという見通しを述べている。そして、今回HPが提供するのがクラウドコンピューティングに特化した専用端末「HP t5730wi Internet Appliance」である。
新製品=シンクライアント端末ではない
HP t5730wi Internet Applianceは、OSにWindows Embedded Standard、CPUにAMD Sempron 2100+を採用した小型端末で、メモリも2GB搭載する。従来の画面転送型のシンクライアント端末を改良したもので、デスクトップ仮想化や管理モジュールなどを削った代わりに、Sun Java 6.14、Adobe Flash10、Adobe Reader Direct X 9.0c、.NET Framework 2.0、OpenGLなどのRIA(Rich Internet Application)環境用のコンポーネントを追加。ハードウェアの仕様も一部変更し、Webブラウザでインターネットアプリケーションを利用するのに特化させた。
日本ヒューレット・パッカード クライアントソリューション本部長の九嶋俊一氏は「クラウド時代に今までのPCでよいのか? 管理がシンプルで、電力消費も小さく、よりWebに特化した端末があってもよいのではないのか?」と。久嶋氏はWebアプリケーション化が進んでいるHP社内の事情を説明し、クラウドの一例としてWebデスクトップを提供する「StartForce」を経由することでMS Officeも利用できるというデモも実施した。
1990年代後半のNCを具現化したような端末だが、ブロードバンド化やプロセッサのパフォーマンス向上、消費電力の低減、なによりSaaS系アプリケーションの充実などで、より実用度は向上しているといえるだろう。