さらに上がある!? 驚異の「シアターモード」
BDレコーダーとしては、これで十分にトップクラスの高音質と言える。しかし、まだ先がある。それが「シアターモード」。これは、BD再生時に不要となるHDDの回転停止、チューナー回路の電源カット、冷却ファンの低回転化などを行なうもの。
これらにより、電流ノイズは10dB削減されるという。内部で発生する振動やノイズの原因を減らすことでさらなる高音質化を実現するわけだ。このほか、回転の止まったHDD自体は、基板の振動を押さえ込むウェイトとして作用するほか、不要な電力の消費が少なくなるため、瞬時に大音量が出る場合でも十分な電力供給が可能になり、音の立ち上がりの良さにも効果があるという。
このモードは、BDレコーダーとしては諸刃の剣で、言わばBDレコーダーをBDプレーヤーにしてしまうもの。パナソニックのようなメーカーの製品としては本来ありえない機能だ。なぜなら、HDDもチューナーも止まるため、「シアターモード」中はテレビ放送の視聴ができないどころか、録画予約ができなくなる。
視聴に夢中になって録画予約時間が来ても、録画はできない状態なのだ。シアターモード中は頻繁にその旨を警告する表示が出る。機能的には全モデルに組み込むことも不可能ではないものだが、AV機器に詳しい人がユーザーの大半を占めると思われる「DMR-BW970」だけの特別な機能とされている。
果たして、このシアターモードにどれだけの効果があるだろうか? 効能はすでに書いたが、果たして聴感上その差が現れるのだろうか?
「なんだこれは!?」と唸ってしまう音質に
その違いには愕然とさせられた。基本的な音の傾向に変化はないが、細かい音がかなり増えるし、弱音のニュアンスもはっきりと明瞭になる。映画での爆発音やオーケストラですべての楽器が一斉に音を出すときの勢いもまるで違う。よりダイナミックで情報量の多い音は、まさに高級BDプレーヤークラス。
基本的に弱音の微細な音の増加や、瞬間的な大音量の勢いなど、ダイナミックレンジが広がり、情報量が増える印象。そのため、部屋自体がエアコンの騒音や外部の騒がしさなどで、S/Nがわかりにくい場所では効果を実感しにくい。ある程度の音量を出すことも必要なので、それなりのオーディオ環境を整える(または隣近所に理解を得る)必要もある。量販店の店頭で違いを聞き分けるのは難しいだろう。
映像もトップクラスだが、音(特に「シアターモード」)には正直びっくりした。視聴時はいくつものディスクを使うので1部分のみを見ることが多いのだが、ついつい借用期間ギリギリまで粘って、いくつものソフトを通して見てしまった。
BDレコーダーは、今後はかつてのVHSデッキと同じ800万台市場を目指し(現在のレコーダー全体の市場は400万台程度)、より広い層へ普及を拡大していく。そうなると、こだわった製品は作りにくくなり、AVマニアはよりこだわった製品としてBDプレーヤーを選択するようになる。だから、近い将来、BDレコーダーは普通の家電になると思っていた。そんな時期に、これだけとんがったモデルを発売したパナソニックのこだわりはとても立派だ。