新VBR方式の採用で、8倍モードもかなり優秀!
新採用となった「HM」(8倍)録画モードの画質もチェックしてみよう。新VBR方式を採用した「新アドバンスドAVCエンコーダー」は、映像シーンの動きに応じた圧縮の精度をさらに高め、動きの速いシーンではより多くの情報量を与えてノイズを抑え、ゆっくりとしたシーンでは情報量を節約しながらも精細感を向上するようにしている。それぞれの映像に配分する情報量をよりダイナミックに変化させることで、動きの激しいシーンでの映像の破綻を発生しにくくしている。
いくつか番組を見てみたが、スポーツ番組(プロ野球中継)では、カメラが固定したアングルで、やや甘くなった印象はあるものの、ユニフォームの質感もしっかりと再現され、ほとんど差を感じない。カメラが大きく動く場面は、もともとの映像も大きくブレており、情報量や精細感の差は少ない。客席がぼけたり、打球を追う野手の輪郭も甘くなるが、盛大にブロックノイズが発生するようなことはなかった。
歌番組はやや苦手。このあたりはMPEG-4 AVCでの長時間モード全般に共通するようだ。暗めのステージでは解像度の劣化とノイズの発生が散見される。歌手がバストアップくらいにまで寄る画面では、髪の毛の質感が甘くなり、表情もややザラついた印象になってしまう。
アニメ番組もあまり印象はよくない。激しい動きのあるシーンでは、どうしても輪郭がギザギザに乱れてしまうし、モスキートノイズと呼ばれる輪郭付近のもやもやとした映像の乱れも多い。あまり動きのない場面での落差はさほど感じないが、太い描線で描かれる輪郭のキレはやや甘い。番組の内容にもよるが、音楽ライブやアニメは、長時間モードでも、より情報量の多いモードを選びたいと思った。今回から、HDD内での画質変換ダビングが可能になったので、ダビング回数に余裕があるなら、BDに焼く前にいくつかのモードを試してより良好なものを選ぶといいだろう。
ニュース番組は、一見しただけでは違いがわからないほどに良好。精細感の劣化も感じられず、暗部のディテールもしっかりと残っている。アナウンサーが顔を横に向けるときなど、ときおり輪郭が乱れることはあるが、見づらいと感じるほどではない。仮にBDに保存するとしても、8倍モードでもまったく問題ないと感じた。相性がよいと思われたドキュメント系の静止したアングルの多い番組では、全体的に精細感がやや甘くなるように感じる。看板の文字が読めなくなるほどではないが、美術品や歴史的な建築を精細に撮影した番組などでは少々不満を感じる。
同じくドキュメント系の番組の、イベントでの夜のイルミネーションを写したシーンでは、さすがにあまりにも意地悪なソースで、明暗差が激しい上にイルミネーションが明滅するため、解像度の劣化に加えてノイズも目立ってしまう。同様に夜景や花火なども苦手なソースと言えるだろう。
映画は夜明け前の暗い街を空撮したシーンなどでも大きな劣化感はない。明暗差やライトの激しい明滅がなければ、暗いシーンそのものには強いようなのだ。フィルム撮影された映画などはもともとやや甘い映像も多いので、劣化感も少ない。最新のCGを駆使した高精細な画作りの作品や、動きの激しいアクション映画でなければ、案外長時間モードでもいけると感じた。
総じて、映像がややソフトになる傾向にある。ソースによる得意不得意もあるが、基本的にはノイズをよく抑え、見やすさを重視した方向だ。8倍もの長時間モードとしては非常に優秀。MPEG-4 AVCを初搭載した世代に比べれば、2倍ないし3倍モードに迫る画質と思われる。それなりの劣化はもちろんあるので、BDへの保存はDR以外認めないという人には違いも感じられるが、これくらいの差は許容範囲と感じる人も随分増えると思う。