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OSベンダーからIaaSプロバイダーに!

OSからミドルウェアまで全面展開するレッドハット

2009年06月24日 06時00分更新

文● 飯岡真志/ASCII.technologies編集部

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6月23日、レッドハットは都内で記者説明会を行ない、クラウド時代における同社の戦略について説明した。登壇したのは、米レッドハットのプロダクト・テクノロジー部門のトップであるポール・コーミア氏(Paul Cormier)。

幅広い製品でシェアを獲得

米レッドハット プロダクト・テクノロジー部門プレジデント、ポール・コーミア氏

 レッドハットは、もっとも歴史のあるLinuxディストリビューションの1つである「Red Hat Linux」で知られている。現在は、エンタープライズ向けの「Red Hat Enterprise Linux」(以下、RHEL)を販売している。また、RHELのプロトタイプ的な位置付けとなるディストリビューション「Fedora」をコミュニティと共同で開発している。さらに同社はOS以外にもエンタープライズ向けのミドルウェア群である「JBoss」、そして仮想化環境のハイパーバイザーとして、LinuxカーネルをベースにしたKVM(Kernel-based Virtual Machine)の開発も行なっている

 コーミア氏はまず、これらレッドハットの製品が各々の市場で占めるシェアについて説明した。サーバーOS市場では、マイクロソフトのWindows ServerとRHELが二強となっており、RHELはLinuxサーバーの80~90%を占めているという。またエンタープライズ向けミドルウェアについては、IBMとレッドハット、そしてBEA(オラクルが買収)が1/3ずつのシェアを持つ。

 さらに仮想化環境では、ヴイエムウェアが大きなシェアを持ち、レッドハットのKVMは増加中といった状況だ。KVMの現状のシェアは小さいものの、今後の伸びに自信を持っているとコーミア氏は語っている。そして、長い目で見ると仮想化システム市場で残っていくのは、ヴイエムウェア、マイクロソフト、そしてレッドハットの3社であると予想している。

レッドハットの各製品の市場シェア

クラウド時代のレッドハット

 企業のシステムがオンプレミス(企業の自社運用システム)に加えてデータセンター、さらにその先にはクラウドを組み合わせたものになっていく。それにともない、かつてはLinuxディストリビュータであったレッドハットも、その役割を変えていくと予想される。クラウドコンピューティング時代のレッドハットは、アマゾンなどクラウドコンピューティングのベンダーと協力し、セキュリティや信頼性を損なわない形で、オンプレミスからクラウドコンピューティング環境への橋渡しを行なえるとコーミア氏は語る。サーバー用のLinux、ミドルウェア、そしてハイパーバイザーを備えたレッドハットならば、それが可能というわけだ。

OS、ミドルウェア、仮想化ハイパーバイザーを備えるレッドハット

 もちろんサーバーOSではWindowsも大きなシェアを占めており、レッドハットがすべてをコントロールできるものではない。そこでレッドハットは、今年の2月にマイクロソフトと共同で両社のOSと仮想化システムの相互検証を行なうことを発表している。すなわち、KVM上でWindows Serverの稼働、Hyper-V上でのRHELの稼働を相互に実施するということだ。

クラウドのインフラでは、Linuxシェア100%?

 すでにIaaS(Infrastructure as a Service)やPaaS(Platform as a Service)を謳ったサービスの提供が始まっている。これらのサービスの裏では、多くの物理サーバーが稼働しているわけだが、「このインフラ側で用いられているOSは、Linuxが大部分を占めている」(コーミア氏)そうだ。たとえば、アマゾンのEC2のインフラは100%Linuxだという。RHELがそのうちのどれくらいを占めているかについては明言を避けたが、「アマゾンは非常に良い顧客(very good customer)だ」と語っている。

 レッドハットが提供する仮想化環境のキーとなるのが、Linuxカーネルをベースに作られたハイパーバイザーの「KVM」だ。レッドハットは、RHELではシトリックスのXenを採用していたが、今後はKVMをメインとして利用していくという。もちろんXenのサポートも数年は続ける予定だ。また、XenからKVMの移行もサポートするそうだ。

 KVMが他のハイパーバイザーと比較して優位な点は、なんといってもLinuxカーネルがベースとなっていること、すなわちLinuxカーネルが備える高い信頼性やパフォーマンス、そして広範なデバイスサポートといった長所をそのまま引き継げる点にある。

 KVMはLinuxカーネルソースに統合されており、独立したハイパーバイザーというよりは、OS/カーネルの一部として存在している。「2年後には、ハイパーバイザーは『そこにあるもの』として当たり前の存在となり、話題にのぼらなくなるだろう」コーミア氏はこのように予想する。

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