国内での企業のネットワーク普及率は、非常に高い。総務省の「通信利用動向調査」によると、従業員100名以上の企業のネットワーク構築率は2006年末の段階で88.1%に上るという。また、このうち「企業内通信網(LAN+WAN)」のみは22.7%で、57.9%は他企業との「企業間通信網」まで構築しているようだ。つまり、ネットワークをゼロから構築するというのは、すでに少なくなっているのが実態といえる。
しかし、機器や設備の陳腐化や組織変更や引っ越し、合併やビジネスの変革など、さまざまな理由でネットワークは作り直される。小規模な継ぎ足しや拡張でしのいでいるケースも多いだろうが、根本的な不満を解消するため、再構築を目論む企業は多いはずだ。
では、ネットワークの構築においては、なにから手を付ければよいかというと、これは今も昔も「要件の定義」である。ネットワーク構築でなにを求めるか? これが決まらない限り、物理的な配置も、かける費用も、購入する機材もまったく決まらないことになる。
企業のネットワーク構築においては、パフォーマンスや信頼性の高さを求めるのが一般的だ。これらの要件とコストの折り合いを付けて、最適なネットワーク構成や導入する機器を決めていくことになる。しかし、昨今ではこれだけに留まらない。組織の拡大やビジネスの変化に柔軟に対応できる拡張性、情報漏えいや不正アクセスなどに対抗するセキュリティ、人材的な負荷を減らすための管理や運用面のしやすさ、あるいは省電力や通信品質など実にさまざまな要件を満たす必要がある。
こうした要件は各企業で千差万別になるはずだ。従来のネットワークに対して明確な不満がある場合は、これらを解消する要件定義が意外とすぐにできるかもしれない。逆に、企業の合併や組織の変更といった例では、要件定義の段階でもめるかもしれない。いずれにせよ、ここをきちんと固めることが、ネットワーク構築成功の必須条件といえるだろう。
では、こうした要件を元に、具体的にどのようにネットワークを構築していったらよいか? 昨今、個人向けのブロードバンドルータや無線LAN機器は設定などが決め打ちされているため、利用まではきわめて容易になっている。極論すれば、IPアドレスなど知らなくても、LANケーブルが挿せれば、インターネットをすぐに利用できる。しかし、ある程度の規模のネットワークを構築しようと思ったら、付け焼き刃の知識ではあっという間に破綻する。たとえ、自らは作業に手は出さなくとも、EthernetやIPなどの知識はもちろん、最新の製品や技術動向、ケーブリングや機器の設置ノウハウなどをきちんと押さえておく必要がある。そうでなければ、無駄なコストが発生したり、トラブルが続発したり、すぐに追加の投資が必要になったりする。
本連載では、構築に必要な機器や技術の基礎から、トポロジ、製品動向まで、ネットワーク構築の知識を幅広くカバーしていく。
(次ページ、「スイッチで階層化される企業のネットワーク」に続く)
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