エントリーから中級クラスのユーザーをターゲットにした各社のデジタル一眼レフ製品を取り上げる連続インタビュー。3社目はニコンだ。同社が9月に発売した『Nikon D80』は、昨年12月に発売され、ヒット作となったハイアマチュア機『Nikon D200』の機能を積極的に取り入れた製品となっている。今回は“撮る楽しさ”の実現にこだわったというD80の開発陣にお話をうかがった。
お話をうかがった(株)ニコン映像カンパニー開発部第一設計部主幹の若林勤氏(右)と同マーケティング本部第一マーケティング部副主幹の中村良夫氏 |
Nikon D80の魅力を知るには、手にとってみるのが一番だ
まず冒頭で強調したいのは、D80の持ち味が何かを感じ取りたかったら、やはり店頭で実機に触れてほしいということだ。広報写真やカタログスペックだけを見ると、取り立てて派手な機能を搭載していないようにも感じるD80だが、実際の操作感に関係してくる光学系やメカの完成度に関しては、ワンクラス上といってもいいコストがかけられており、かなり高品位なつくりである。
例えば、クラス最大をうたう高倍率ファインダーや、レリーズを押した際のキレのいいシャッター音、エンジニアリングプラスチック製ながら金属を思わせる質感のある“レザートーン塗装”の感触などは、他社製品とは一味違った一眼レフらしい風格を感じさせる。これらは、撮影の満足感や所有感といった部分に大きく影響してくるポイントでもあり、機能面でのサポートや画質の良さだけでは得られない“何度もシャッターを切りたくなる”気持ちを喚起させる。これがD80の最大の特徴だと筆者は考えている。
Nikon D80。 |
これらのうち特に注目したいのがファインダーである。レンズ込み10万円程度のエントリーから中級クラスの製品では、低コストなペンタダハミラーを搭載するのが一般的だが、D80ではガラスのペンタプリズムと接眼レンズを使用。0.94倍と高倍率なフレーミングしやすいファインダーとした。設計担当の若林氏は以下のように話す。
ペンタプリズムはカメラのコスト全体でも大きな割合を占めるが、「“見る”という動作は、一眼レフの中でも最も基本的かつ重要な動作であり、この点で妥協するとせっかくのいいレンズやいい撮像素子の持ち味も半減してしまう」と若林氏は言う。ファインダーの部品は上位のD200と共通化した。
撮影機会を増やす、そのためのサイズ設定
一方、商品開発担当の中村氏は「撮影機会を増やすこと」が、D80のコンセプトであったと話す。
商品企画を担当した中村氏。企画から販売までの商品全体のまとめも担当している |
D80はニコンのラインアップの中では、初~中級機のD70sとハイアマからプロまで使うD200の中間に位置付けられている。ターゲットは“写真好きな層”。「写真好きであると同時にメカそのものにも興味があるD200とは若干異なるカテゴリーになる」という。
また、細かな話となるが、背面の液晶パネルにカバーを付けた点。これもニコンならではのこだわりだという。本来は画像確認時に外すものだが、実際には装着された状態で利用されている場合が多く、カバーを付けた状態でも絵の確認ができるようにしている。
D200との性能差はもちろんあるが、写りには自信がある
D80は、CCDの画素数や画素数やファインダーなど、上位のD200に迫るスペックを持っている。ただし、小型サイズの実現をするため、D200と差別化された部分は当然ある。そのひとつが高速性。D80のCCDは2チャンネル読み出しで、D200の4チャンネル読み出しに比べると速度で譲る面がある。また、防塵性や防水性、システムとしての発展性なども差別化される要因である。
設計担当の若林氏。メカを中心にカメラ全体のまとめを担当している。過去にはD100の開発なども担当した |
ただ、肝心の“写り”に関しては、デジタルですから新しくなるぶんだけ、改善していかないといけないと考えています。例えば、画質は、2年前のD70とは違っている。4年前に出したD100とも違っているというように、年々進歩しておりますので、遅く出たぶんだけ、有利な面があると考えています。
“発展性”の面で、若干残念なのは、マニュアルフォーカスのAi-Sレンズを装着した際に内蔵の露出計が利用できない点だ。D80でもレンズの装着は可能なものの、サイズの制約から、マウント部分にレンズの絞りを認識するための機構を入れ込むことができなかったという。もちろんフルマニュアルでの撮影は可能だが、これも機能面でD200とは異なる部分となる。
速度に関しては、撮像素子の読み出し速度に対応する形で、それ以外の回路を構成した。毎秒3コマという連写速度の制限はこれによって生じたものだという。