Flex 2 SDKとFlash Player 9の無償配布を開始
アドビ システムズ(株)は29日、東京・渋谷のセルリアンタワー東急ホテルにプレス関係者を集め、RIA(リッチ・インターネット・アプリケーション)開発環境『Adobe Flex 2』およびFlex 2.0で作成したコンテンツの再生環境となるランタイムプログラム『Flash Player 9』を本日提供開始したと発表した。
米アドビ システムズ社のエンタープライズ&デベロッパービジネスユニット担当シニアディレクターのジェフ・ワトコット氏 |
Adobe Flex 2は、バックエンドのデータベース/メッセージングサービスなどと、フロントエンドのウェブブラウザー(Flash Player)をつなぐRIA開発環境。従来のFlex 1.5と比較して、
- 表現力の向上
- ベクターグラフィックスやグラフィックエフェクトを新たに採用
- データ処理性能の向上
- データ処理コンポーネントの見直しにより、1.5と比べて約10倍の高速処理を実現
プッシュ型配信(サーバー側の情報更新を自動的に反映)やコラボレーション機能(一人のユーザーの行動・変更を自動的にほかのユーザーの画面に反映)を実現可能 - 開発生産性の向上
- Flashコンテンツの動きを制御する新スクリプト言語“ActionScript 3”の採用により、ユーザーインターフェースの構造化などを容易に実現
Flex 2の開発環境“Flex Builder 2”を、従来のDreamweaverからEclipseベースに移行
データベースと連携するための“Flex Data Services 2”を提供
などの改良点がある。なお、Flex 2の特徴や動作デモ画面などは、すでに数回の記者説明会が行なわれたこともあって、会場での詳細説明は省略された(Flex 2の記者説明会はこちらのニュース記事を参照)。
Flex 2の製品ラインナップ | Flex 2の技術的な特徴 |
Flex 2で構築するRIA環境の基本構成 | Eclipseプラグインとしても動作するFlex 2の開発環境『Aobe Flex Builder 2』の画面 |
今日発表されたのは、Flex 2のSDK、Flex Data Services 2 Express(1CPUのみでクラスター環境には非対応の機能限定版)、およびランタイムのFlash Player 9(従来は同 8.5と呼ばれていたもの)が無償配布されたこと、ならびにFlex 2の効率的な開発環境、および大規模なデータベース連携サービスの販売が開始されたこと。販売は同社の提携するSIer/VARなどを通じて行なわれ、参考価格は以下の通り。
- Adobe Flex Builder 2
- スタンドアロン版もしくはEclipseプラグインとして動作
6万4900円 - Adobe Flex Builder 2 with Charting
- グラフ表示機能を追加した開発環境で、動作形態は同上
9万7900円 - Adobe Flex Data Service 2 Department
- 1クラスター内で同時接続100ユーザーまで
1CPUあたり78万円 - Adobe Flex Data Service 2 Enterprise
- 無制限
1CPUあたり260万円
Flex 2のSDKなどと同時にリリースされた、Flash Player 9の特徴 |
従来から無償配布されているFlash Playerの最新版に加えて、今回Flex 2 SDKと機能限定ながらデータベース連携サービスも無償配布した理由について、米アドビ システムズ(Adobe Systems)社のエンタープライズ&デベロッパービジネスユニット担当シニアディレクターのジェフ・ワトコット(Jeff Whatcott)氏は、「2011年までに100万人のFlex 2開発者を獲得することを目標にしている。そのためには、開発者が好むような機能と価格を提供する必要がある」という。つまり、部門レベルの小規模開発が行なえる環境をまず無償提供して開発者の興味を引き、そこで得たノウハウや可能性を活用して大規模システムの構築に進んでもらいたいという同社の狙いを示した。また、RIAアプリケーション開発者が現在注目しているAjax(XML+JavaScript)についても、FlashとAjaxを組み合わせて開発するためのツール“Flex/Ajax Bridge”や“Ajax Client for Flex Data Services”などを提供するとしている。
Flex 2の開発者向け支援策。特にAjax関連のツールを充実させている | Flex 2のβ版配布時点での主な企業カスタマー |
Flex 2は、今日の発表前から開発者向け情報発信サイト“Adobe Labs”を通じてβ版を配布しており、全世界で6万5000人のユーザーに使われているという。これは個人だけでなく、企業にも導入されており、会場では三菱商事(株)の海外駐在員向け事務所会計システムをFlex 2で構築している(11月稼働開始予定)という(株)アイ・ティ・フロンティアが、開発事例を紹介した。