(株)東芝は14日、“故障発生率の低減”を最優先に設計した、ノートパソコン『dynabook Satellite K15/K10』を発表した。価格は17万4300円から。22日に発売する。
dynabook Satellite K15 |
K15とK10は、15.4インチWXGA(1280×800ドット)液晶ディスプレーを搭載した2スピンドルノート。Core Duo T2500-2GHz、Core Duo T2300-1.66GHz、Celeron M 410-1.46GHzを搭載した3種類のベースモデルがあり、メモリー容量や通信機能などのカスタムメイド(BTO)ができる。保証は1年の無償修理に加え、3年のパーツ保証(作業料は有償)が標準で提供される。バッテリー寿命はCore Duo搭載モデルが約4.1時間、Celeron M搭載モデルが約2.1時間。
dynabook Satellite J60 |
また、FDDを搭載した3スピンドルノート『dynabook Satellite J60』も同時に発表。こちらは、Core Duo T2500-2GHz、Core Duo T2300-1.66GHz、Celeron M 410-1.46GHzを搭載した6種類のベースモデルが選べる。デスクトップ代替ノートで、バッテリー寿命はCore Duo搭載モデルが約2.4時間、Celeron M搭載モデルが約2時間。
こわれにくくするための工夫
K15とK10に開発に当たって東芝では「HDDなどのパーツや、BIOS、マザーボードまで自前で設計できる」自社開発の強みを、製品の品質に反映したという。国産メーカーでも、ノートパソコンの製造は台湾メーカーに製造委託しているケースは多い。また、国内に自社工場を持つ企業でも、主要モジュールを他社から購入し、組み立てだけを行なっているケースが多い。
また、量産品では、ある割合の不良が出るのはやむを得ないため、故障率には目をつぶり、修理期間の短縮などサポート面でカバーするアプローチを取るメーカーもある。しかし、東芝は“こわれても安心”ではなく“こわれないこと”を重視した製品開発を進めていくと明言している。
HDDプロテクトラバー | ウォーターブロック構造 |
なお、今回の製品は、耐衝撃性や防水防塵性能などを向上させたヘビーデューティー仕様のノートパソコンとは異なる。あくまでも振動、熱、湿気など外的な要因から発生する“通常利用時の故障”の低減が目標である。
マザーボード設計に工夫、検証にも注力
K15とK10では、まずメイン基板(マザーボード)を単板化することで、コネクターやハンダを少なくした。また、基板を固定するボス(ネジ穴)周辺は、振動などの影響を受けやすいため、ここには基板部品を実装していない。さらに基板のセンター部分のボスはあえてネジ止めせず、基板の応力を逃がす遊びを持たせたという。また、ハンダ付け時の不具合を避けるために、基板の反りを約1/2に低減したり、製造工程で断線や接触不良の原因となる要素を排除するといった取り組みも行なっている。
メイン基板のCAD画像。赤丸でくくられているのがネジ部分 |
筐体に関しては、微振動の蓄積によって生じる、ネジの緩み/脱落による不具合を低減するため、ネジそのものの数を減らした。ネジの数に関しては公表されていないが、他社と同程度だった従来機に比べて約半分になっているという。
検証にも力を入れている。そのひとつが“HALT”(High Accelerated Life Test)と呼ばれる“超過速度限界システム”による試験である。5日間で3年分の経年劣化をシミュレーションできる数千万円の試験機で、日本に3拠点しかない設備。このシステムを利用することで、設計段階でウイークポイントを発見し、品質強化のための変更が行なえる。
HALT(High Accelerated Life Test)。加速度試験に利用する |
また、ドイツの第3者機関TÜV Reinland Group(テュフラインランドグループ)による70cmの4面落下試験、水100ccの防滴試験(キーボードに水を注いだ後3分間作動)を行なうなど、信頼性に関するデータ収集も行なっている。
本体の安さ=TCOの削減ではないという提案
ビジネスノートの選択は、スペック構成や価格に関心がいきがちだが、長期間の運用でのTCO(Total Cost of Ownership)を考えると、故障による機会損失、サポートに修理を依頼する手間なども見えないコストになる。どんなに優れたサポートが提供されていても、壊れないことに越したことはないだろう。
もちろん、品質にこだわるのはメーカーとして当然の姿勢だし、「東芝のパソコンが“本当に”こわれにくいかどうか」も、客観的な検証が難しい。メーカーのコメントを鵜呑みにすることはできないが、とかく品質より価格を優先しがちなパソコン業界で、あえて“品質”を声高に叫んだ東芝のアプローチは評価していいと思う。少なくとも、品質に対して自社が行なっている取り組みを、積極的に開示する姿勢は、歓迎すべきではないか。
また、このことで、実際にパソコンを選択する側のユーザーが、製品の品質に対してシビアな目を持ち、「安くても、いいものでなければ売れない」という状況を作っていくことが重要ではないだろうか。