(株)日立製作所は11日、モノクロA4サイズの電子ペーパーディスプレー“Albirey(アルビレイ)”を使った電子ペーパーソリューションを法人向けパッケージとして製品化し、12日から販売すると発表した。表示画像処理アプリケーション、配信サーバーまで含めて、価格は台数によって400~2000万円程度。
ブリヂストンと共同開発した電子ディスプレー“Albirey(アルビレイ)” |
ディスプレーの製品概要は以下の通り。
解像度、1024×768ドット。モノクロ2値表示
重量580g
試作機なので、やや映り込みが気になるが、コントラストは十分高い | 最薄部3.7mmの超薄型 |
今回の製品に使われた電子ペーパーは、(株)ブリヂストンが開発したもので、開発方針の決定や生産体制で両者は3月以来共同開発を進めてきた。表示方式は“電子粉流体方式(パッシブマトリックス方式)”と呼ばれるもの。日立側は無線チップの小型化や低消費電力化を担当した。
ブリヂストンのデバイスを採用 |
電子ペーパーデバイスの単体製品への組み込みではなく、統合ソリューションとしての提供は世界で初となるという。想定している利用シーンは、鉄道やバスなどの交通機関での情報表示端末、飲食店でのメニュー、ホテルや自治体など公共性の高い施設での告知・広告表示などとなっている。会見で説明した情報・通信グループの藤原和紀氏(情報制御システム事業部 交通システム本部長)によると、今後2010年までに年間100億円程度の売り上げを目指しており、そのうち約半分が交通機関関係の需要、具体的には駅構内や周辺ビルや店舗での利用と見込んでいるという。また、海外への事業展開も積極的に行なっていき、日本とアジア圏でそれぞれ4割ずつを売り上げ、欧米で残り2割という比率を想定しているとした。
藤原氏は、製品の位置づけを「電子ペーパーは従来のプラズマや液晶といったディスプレーを代替するものではなく、紙とディスプレーの中間的な存在」と説明。「変化の激しい動画映像や、暗い場所での展示といった利用は想定していない。また、バス停の時刻表表示のように、ディスプレーをパネル内部に設置するようになるものと考えており、表面が雨風にさらされるような環境も想定していない」と、デバイスの想定利用シーンを説明した。従来のディスプレーとは異なり、ケーブル類が不要なため、通信や電源といったインフラが整備されていない環境への導入も容易という。
情報・通信グループの藤原和紀氏(情報制御システム事業部 交通システム本部長) |
電子ペーパーディスプレーは単体販売されず、表示画像の準備から配信までを処理するサーバーシステムまで含まれたパッケージとして個別見積もりによる受注を行なう。ディスプレー10台の“エントリーモデル”、20~40台の“ベーシックモデル”、50~70台の“アドバンストモデル”、80~100台の“エンタープライズモデル”などが用意され、設置工事やサポートも提供可能としている。
配信サーバーまで含めたシステム販売となる | 導入例 |
配信サーバーは、PDFやオフィス文書など、一般的な文書をモノクロ2値のビットマップ画像へ変換処理する。また、あらかじめディスプレーごとに表示コンテンツ、表示開始・終了時間、書き換え時間などを設定できる。いっぽう、設置されたディスプレーは、無線LANを通じてサーバーにアクセス。スケジュールをダウンロードして、必要時に書き換えと最低限の通信だけを行なうため、長時間バッテリー駆動時間が可能になったとしている。
今後日立では、電子ペーパーのカラー化にも注力する方針で、4色程度から特定の2色を表示色として選択する“バイクロ”、画面上の特定エリアだけに着色する“エリアカラー”の端末も年内に量産出荷を開始する。また、8~64色のカラー端末については、現在開発中で7月中旬には試作機を発表、来年夏には量産出荷を開始したい考えだ。
今後のカラー化に向けたロードマップ |