日本アイ・ビー・エム(株)は9日、2006年のソフトウェア事業戦略に関する記者説明会を開催した。同社は、これまでも取り組んでいるミドルウェア事業を基盤に、サービス指向アーキテクチャー(SOA、Service Oriented Architecture)や日本版SOX法などといった現在注目されている5つのトピックにフォーカスした高付加価値なソリューションの普及促進などの展開を行なっていくという。
常務執行役員 ソフトウェア事業担当の三浦浩氏 |
説明を行なった常務執行役員でソフトウェア事業担当の三浦浩氏によると、ソフトウェア事業の中心となる製品は、開発ツール基盤“Rational”、ウェブアプリケーション基盤“WebSphere”、データ基盤“DB2”、コラボレーション基盤“Lotus”、運用管理基盤“Tivoli”の5ブランドからなるミドルウェア基盤製品群。各種ハードウェアおよびOS環境で運用するこれらのミドルウェアを基盤とするアプリケーションの“パッケージ”に関しては、従来どおり日本IBMとして開発/販売する方針にはなく(案件個別対応で顧客から開発の依頼があった場合には、サービス部門などが「喜んでお請けする」という)、パッケージ・アプリケーションを展開する国内外のパートナー企業らと幅広く協力体制を取っていくという。
この基本方針に基づき、2006年の日本IBMは大きく次の3つの戦略でソフトウェア事業の展開を行なっていく。
- “高付加価値ソリューション”の普及促進
- ひとつまたは複数のミドルウェアに、サポートサービスやコンサルテーションを組み合わせ、より高い価値を顧客に提供するソリューションを展開
- ソリューション分野としては、SOA、日本版SOX法(企業改革法)関連、ポータル、ITIL(Information Technology Infrastructure Library)、ITLM(IT Lifecycle Management)の5つにフォーカス。5分野で合計20種類のソリューションを提供し、2006年内に30種類に拡大を目指す
- 高付加価値ソリューションの展開に向けた新たなセールス/プロモーションチームを組織。ソフトウェア/ハードウェア/サービス/コンサルティングの各部門の協業による30人体制の組織で、3月1日から活動を開始
- オープンスタンダードの推進
- 同社のミドルウェアを扱う技術者の裾野の拡大や、前述の高付加価値ソリューションの普及促進などに向け、オープンソースへの貢献に努める
- 無償版『DB2 Express-C』やオープンソースベースの『WAS-CE』を発表
- 日本市場に適したビジネスの推進
- 米International Business Machines(IBM)社が買収した企業のビジネスを国内でも展開。展開にあたっては、自社の従来製品および買収した製品について偏りなく顧客に紹介/提供し、ソフトウェア自体の統合化については開発部門がそれぞれに進行。また、組織的な統合もスムーズに実施
- SI/ISVパートナーとの協業をさらに展開し、パートナーバリューチェーンを強化
三浦氏は、高付加価値ソリューションの注力分野として挙げられたSOAについて「2006年に大きく前進」するとの見込みを示し、“WebSphere”“Tivoli”“Rational”ブランドの各製品の連携によるSOAライフサイクルの実現、SOAのオープンスタンダード化に向けたパッケージソフトウェア/ミドルウェアベンダー8社による次世代SOAオープン仕様“Service Component Architecture(SCA)”策定への参画などといった取り組みを強化していくという。
なお、質疑応答の中で同社ソフトウェア事業の収益ついて触れ、具体的な金額の明示はなかったものの、全体では増収となったという。ミドルウェア5ブランドのうち、“Tivoli”“Rational”の2つが特に大きく貢献したといい、前者はセキュリティー関連への関心・ニーズの高まり、後者は開発生産性の向上に対するニーズやAV家電分野などでの組み込み型ソフトウェアの増加といった市場の状況がビジネスの拡大につながったと見られるという。