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【Macworld Expo 2006 Vol.3】スティーブ・ジョブズの基調講演をじっくり振り返る(後編)

2006年01月12日 00時57分更新

文● 林 信行

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onemorething
ジョブズの基調講演では、もはや恒例とも言えるのがコレ。今年は何だったのかは、すでにご存じのとおり

スティーブ・ジョブズのキーノートでは、必ず最後に「One more thing...」という爆弾発表がある。今回の爆弾発表は"MacBook Pro"だった。

ジョブズは「アップルがもっと速いノートパソコンを出そうとしていたことは、もはや公然の秘密だ」と漏らした。しかし、「PowerPCを使い続ける限りどうしてもこれは実現しなかった」と続く。

高速なPowerBookを実現する上で、最も重要だったのが消費電力あたりのパフォーマンス、Performance per Wattだ。

PowerPC G4ではこれが0.27だった。PowerPC G5は、速度は圧倒的に速かったが、その分、消費電力が大きいため、Performance per Wattは0.23とG4よりもかえって低くなっていた。では、新しいIntel Core Duoはどうかというと1.05で、PowerPCと比べて圧倒的に速く、消費電力も低かった。そこで、アップルはこのIntel Core Duoを搭載したノート型を開発することに決めた。

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消費電力あたりのパフォーマンスは、Intel Core Duoが圧倒的に高く、PowerPC G5との比較では4.5倍だという

新ノートの製品名はMacBook Proだ。ジョブズは「PowerPCを使うわけでもないので、『Power』と付ける必要はもうないだろう。それよりはむしろ『Mac』という名前を使って広めた方がいい」と語る。MacBook ProはデュアルコアCPUを搭載し、従来のPowerBook G4に比べて4~5倍高速。史上最速のノート型Macであり、それと同時にこれまででもっとも薄いという。

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MacBook Proのベンチマーク数値。新旧のiMacに比べて、その差がかなり大きい

「いくつか新しい機能も備えている」とジョブズが紹介したのは、まずは15.4インチのワイドスクリーン液晶。なんとApple Cinema Display並みに明るいという。2つ目は、その液晶画面のすぐ上に用意された小さな四角い穴、実はこれは、内蔵型のiSightで、本体だけでiChat AVやPhotoBoothといったアプリケーションも使えるようになる。

ジョブズは「それではさっそくこの新しい機能をデモしよう」と語ると、iMacに向かってiChat AVを立ち上げ、アップル社のワールドワイドマーケティング担当副社長、フィル・シラー氏を呼び出した。すると場内の観客に紛れていたフィル・シラー氏が立ち上がりMacBook Proの内蔵カメラを使ってビデオチャットに応答してみせた。

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シネマディスプレイと同等の輝度を持つ液晶モニターに加えて、iSightも搭載され、ビデオチャットが標準で楽しめる。右はその実演に駆り出されたフィル・シラー氏

MacBook Proには、もうひとつ新しいハードウェア機能がある。ラッチ用のボタンの横に用意された赤外線の受光部だ。これにより、iMac同様にMacBook Proでもリモコン操作環境のFront Rowが使えるようになる。

だが、Mac Book Proの機能の中でも、もっとも斬新なのはMagSafeだろう。ジョブズは「これまで何人の人が、自分のPowerBookの電源ケーブルに足をひっかけて、PowerBookを机から落としかけたか」と語った。

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磁石によって固定するという斬新な発想が光るMagSafe。充電中は緑のLEDが点灯する

MagSafeはこの問題を解決する特許申請中の新技術だ。ACアダプターのMacBook Pro側のコネクターをマグネットで吸着させる仕様にし、万が一、誰かが足をひっかけても、コードが(MacBook Proを引っ張り落とすことなく)外れるようになっている。

MacBook Proの厚みは2.59センチメートル、重量は2.54キログラムで、バックライト付きキーボードやスクローリングトラックパッド、モーションセンサーや30インチCinema Displayに対応したDual DVIポート、デジタル光入出力とアナログ入出力の2種類のオーディオ入出力端子など、従来のPowerBookの機能もすべて兼ね備えており、CPUのスピードに応じて2モデルが用意されている。出荷は2月から開始される。

創業30年経っても変わり続けるアップル

MacBook Proの紹介の後、ジョブズはインテルMacの広告をもう1度流し、この数カ月の間、徹夜を繰り返しながら、これらの製品開発に全力をつくしてきた社員達を拍手で讃え、アップル社員に付き合って頑張ってくれたインテル社の社員達にもエールを送った。

最後にスクリーンには、若き日のアップル創業者スティーブ・ジョブズとスティーブ・ウォズニアックの写真が映し出される。「アップル社が創業したのは奇しくも今から30年前のエイプリルフールだった」と語るジョブズ。

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若き日のジョブズとウォズニアック。30年前の春、アップルは創業した

節目となる年が、インテルCPUへの移行とともに始まった。

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