マクロメディア「Studio 8」のパッケージ。 |
マクロメディア(株)の中核的な技術である“Flash”が、現在のウェブ表現には欠かせない確固たる地位を築いたことは、もはや周知の事実と言えるだろう。ウェブコンテンツの制作、ならびにウェブサイトの開発者、企業の内外向けサービスの核となるエンタープライズ、さらにモバイル環境と、Flashの重要性は日に日に高まっている。10月に発表された「Macromedia FLASH Professional 8」は、そうした次世代Flash Platformの核となるクライアントソフト「Flash Player 8」(無料配布中)に対応した、ウェブコンテンツ制作ソフトだ。と同時にウェブ制作スィート「Macromedia STUDIO 8」においても、ウェブページ作成ソフト「Dreamweaver 8」と並んで、その中心的存在と言えるだろう。
特に今回のバージョンアップではグラフィック表現の向上、高品位な動画表現のサポート、モバイルコンテンツ制作の効率化など、大幅な機能強化を図っている。これらをチェックしていこう。
●グラフィックエフェクトなど表現力を向上
ドロップシャドーを設定する画面。 |
“グラフィックエフェクト”や“ブレンドモード”による効果で、より細やかな陰影や光による効果を付加した繊細なグラフィック表現を実現している。
“グラフィックエフェクト”により、Photoshopなど外部のグラフィックツールを使わずに、現在扱っているオブジェクトに対してさまざまなグラフィックフィルターを適用できるようになった。フィルターには“ドロップシャドウ”“ぼかし”“グロー”“ベベル”“グラデーションベベル”“グラデーショングロー”“カラー調整”の7種類があり、さまざまな演出や効果を組み合わせて適用することもできる。
ブレンドモードで設定できるメニュー。 |
“乗算”“反転”などが用意された“ブレンドモード”では、現在扱っているオブジェクトのイメージとその下のレイヤーにあるオブジェクトイメージの組み合わせ方を変更することで、さまざまな表現が可能になった。
●より高品位なテキスト表示を実現
改良した新テキストレンダリングエンジン“Flash Type”により、テキストオブジェクトに対して、小さなフォントでもよりクッキリはっきりした高品位表示ができるようになった。また、新しいアンチエイリアス機能により、書体に合わせた最適な輪郭表示を実現し、テキストの鮮明さと読みやすさが大幅に向上している。
●高度なアニメーション制御を実現
新機能“カスタムイージング”の搭載によって、オブジェクトを変化させる速さを制御するトゥイーンの“イージング”が一新され、オブジェクトの位置や回転、伸縮、カラー、フィルタといった変化の度合い(時間軸による変化)をベジェ曲線を利用したグラフから容易に制御できるようになった。結果はその場でプレビューできるので、今までは経験や勘に頼るところも多かった複雑な動きのアニメーションも、迅速かつ的確に構築できる。
ベジェ曲線で動きや変化を設定できるカスタムイージングの設定画面。 |
さらに最新の制御言語“Action Script 2.0”には、ビットマップデータ処理(ビットマップキャッシュ)、ファイルのアップデート、ダウンロードなどさまざまな新機能が追加された。また、ActionScriptに詳しくなくてもスクリプトを自動作成できる“スクリプトアシストモード”(旧名:アシストモード)が復活したのもうれしいところだ。
●On2 VP6コーデック、
そしてウェブビデオ初のアルファチャネルサポート
Flash Videoの制作に関する機能も大幅に改善された。まず、コーデックに新たに“On2 VP6”が加わった。低帯域幅でも従来よりはるかに高画質な動画を作成でき、同じ画質ならよりデータを軽くすることができる。これによりダウンロード時間の短いビデオが作成できるようになった。
さらに、ビデオオブジェクトに“アルファチャンネル”を適用して、透明効果を与えることができるようになり、アルファチャネルを含んだビデオをVP6形式でエンコードすると“ビデオアルファチャネル”を用いたリアルタイム合成(重ね合わせ)ができるようになった。例えば水や煙、火といったエフェクトやブルースクリーン(クロマキー)を利用して撮影したビデオなどを合成することで、よりダイナミックな映像を制作できる。
ビデオ変換ツールの設定画面。 |
付属のアプリケーションとして、既存のビデオファイルをFlash Video(FLV)形式に変換するビデオコンバーターも追加された。複数のビデオファイルを一括変換するバッチ処理も可能だ。また、アップルコンピュータ(株)の動画編集ソフト「Final Cut Pro」などの業界標準ツールから直接FLVファイルを書き出すための“QuickTimeプラグイン”も同梱されている。
●ケータイ向けFlashコンテンツ作成機能を効率化
携帯電話のFlash対応が充実してきた(クライアントソフト「Flash Lite」を標準搭載する端末が増えた)ことで、次々に携帯電話向けのFlashコンテンツも多数制作されるようになった。しかし、これにはパソコンと異なる限られた画面サイズやFlash Liteのバージョンにより、動作するFlashコンテンツが携帯電話の端末ごとに異なるため、特に動作確認作業は制作者の大きな負担になっていた。
Flash Liteで携帯電話のプロファイル一覧を呼び出したところ。 |
今回、Flash Professional 8には最新のFlash対応端末のプロファイルを同梱しており、Flashコンテンツをプレビューする“Flash Liteエミュレータ”により、オーサリング環境内でターゲットとする端末の画面サイズやボタン操作、Action Scriptの動作チェックといった基本的な動作確認をすることが可能になった。なお、携帯電話のプロファイルは、新機種が登場次第、追って提供される予定になっている。
FlashLiteエミュレータで「Nokia 7610」を呼び出したところ。 |
Flash Professional 8の主なスペック | |
製品名 | Flash Professional 8 |
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OS | Windows 2000 SP3以上/XP、Mac OS X 10.3~10.4 |
CPU | Pentium III-800MHz以上、PowerPC G3-600MHz以上 |
メモリ | 256MB以上(複数のStudio 8ツールを同時実行する場合は1GB以上を推奨) |
HDD | 1.8GB以上(Windows)、1.2GB以上(Mac OS X) |