【続報】“Canon EXPO 2005 in Tokyo”――フル顔料フォトプリンター、デジタルTVプリンター、笑顔検出シャッターなど興味深い展示品が続々!!
2005年10月26日 21時38分更新
会場に唯一展示された55インチのSEDは、カットモデルだった |
キヤノン(株)、キヤノン販売(株)のプライベートイベント“Canon EXPO 2005 in Tokyo”では、開発中の最新製品から将来の商品化を見据えたコンセプトモデルまで、さまざまな展示品が並べられ、来場者を驚かせるものも多かった。特に同社が注力している新型ディスプレーデバイス“SED(Surface-conduction Electron-emitter Display、表面伝導型電子放出素子ディスプレー)”は、量産試作前の36インチタイプ20数台(用意できるほぼすべての数だという)を会場内のあちらこちらに並べて、デジタルカメラやデジタルビデオカメラなど、映像デバイスとの組み合わせで高画質&高速応答な表示性能を誇示していた。なお、SEDの商品化(量産化)については、2006年前半にまず55インチサイズから開始する予定で、会場にはそのカットモデル(内部構造が分かるもの)が1台展示されていた。
“プロフェッショナル顔料フォトプリンター”(参考出展) |
“くらしとキヤノン”のコーナーは、デジタルカメラやプリンター/複合機、ファクスなど一般ユーザーにも身近な商品、およびそれらの近未来を予感させるコンセプトモデルや開発中の新製品を展示している。ここでまず注目を集めたのが“プロフェッショナル顔料フォトプリンター”(参考出展)。明らかになっているスペックは、
- “プロフェッショナル向けモノクロプリント”に対応する顔料インク使用のA3ノビ/半切サイズ対応フォトプリンター
- 最高解像度:4800dpi
- 全色顔料インク10色使用(ただしインク色の詳細は非公開)
- フロントフィーダーにより用紙を湾曲させずに印刷が可能で、厚手(1m2あたり310gまで)の紙にも対応
- 2006年上期発売予定
- 予定価格:9万円前後
となっている。一般的な用紙やフォト専用紙などは従来同様背面トレイから給紙できるが、厚手の紙の場合、フロントフィーダーボタンで給紙システムを切り替えると前面から紙を湾曲させずに吸い込んで、スイッチバックして印刷を始める(背面トレイを外しておく必要がある)。これにより、厚手の表面に凹凸がある用紙でも、紙の質感を生かした出力が得られるという。
有機ELディスプレー搭載の一眼レフデジタルカメラ |
次世代デバイスとして同社が開発に取り組んでいる“有機ELディスプレー”と“燃料電池”については、一眼レフカメラやコンパクトカメラに搭載したコンセプトモデルが展示されていた。いずれも開発/発売が決定しているものではなく、既存のボディーに搭載してみせたというもの。有機ELディスプレーのスペックは
- 2.4インチQVGA表示/167ppi
- 輝度:300cd/m2
- コントラスト比:500:1以上
- 色再現領域:NTSC比70%以上
というもので、自発光する有機ELならではの広い視野角(ほぼ真横から見ても白浮きしない)が確認できた。
『EOS Kiss N』のサブグリップ部分に燃料電池ユニットを搭載したコンセプトモデル | 背面から見たところ。シャッターボタンが付いていれば、サブグリップとしても違和感ない | |
PowerShot Gシリーズと思われる本体に燃料電池ユニットを内蔵したコンセプトモデル。発生する水蒸気を逃がすためのスリットが見える | キヤノンが開発中の燃料電池ユニットと水素タンク | |
キヤノンが開発中の燃料電池と搭載デバイス群 |
キヤノンが開発している燃料電池は、燃料に気体の水素を用いるもの。メタノールを採用しない理由は、デジタルカメラなどの場合高出力(条件によるが数Wレベル)が必要なため。現在はリチウムイオンバッテリーと同等の駆動時間だが、将来的には同じ体積で3~5倍に増大する見込み。タバコ箱程度の燃料電池ユニットの容積は120cc(うち水素ボンベは50cc)で、そこに2.5気圧で約4.6リットルの水素を注入しているとのこと。
“デジタルTVプリンター” |
リビングルームでTVに並べたプリンターを、毎日自然に使うという提案も興味深い存在だ。同社が提案するコンセプトモデル“デジタルTVプリンター”は、TVのデジタル放送が普及した暁には番組に合わせたデータ放送が広く行なわれるため、その情報を印刷して手元に残したい、という需要が増えることを見越して提案するもの。外観はAV機器そのもので、TV(会場では36インチSED)の隣に置かれても違和感がなかった。
36インチSEDと並んで置かれた“デジタルTVプリンター”。一見するとHDDレコーダーのよう | “フューチャーフォトアルバム”で視聴するファイルを検索・指定するリモコン |
そのほか、デジタルカメラやデジタルビデオカメラで撮った映像をホームAVサーバーに溜め込んで、いつでも見たい時に取り出す“フューチャーフォトアルバム”というコンセプトも提案され、それを使いやすくするというリングコントローラー付きリモコンなども展示された。
一番基本となる“顔検知”技術 | “笑顔検知”技術で、笑顔の瞬間に自動でシャッターを切る | |
“まばたき撮影防止”は、ありがちな失敗写真である、目をつぶった画像をなくしてくれる!? | 動き回る子どもを撮る方には、“自動追尾”技術を早く実用化してほしいところだろう | |
撮影を失敗しないための技術群 |
ユーザーが撮影をもっと楽に、失敗写真を少なくするための技術も展示された。
- 顔検知
- 笑顔検知
- まばたき撮影防止
- 自動追尾
の4つで、顔検知はすでにカメラのフォーカスやプリンターの色味補正などに採用されている技術。これを応用して、笑顔の瞬間に自動的にシャッターを切る技術や、まばたきしていない(目を開いている)瞬間にシャッターを切る技術などが実演デモされた。自動追尾カメラは、映像の中で特定の顔をカメラが向きを変えて追いかけるというもの。あちこち動き回る子どもを映そうとして、スグにフレームの外に逃げられてしまうというパパさん&ママさんカメラマンにはうれしい機能になりそうだ。
女医&看護師姿でのデモンストレーションもあった、医療関連機器の展示ブース |
“社会とキヤノン”のコーナーでは、医療分野への取り組みが興味深かった。あまり知られていないが、キヤノンでは眼底撮影用高解像度カメラを開発/発売している。カメラ技術を応用することで、強いライトを当てなくとも眼底を高精細に撮影・記録できるため、患者の負担が少ないという。また、同社のインクジェット技術を応用して従来注射や経口で行なっていた投薬を経肺(吸入)で行ない、看護士や患者の負担を減らすというソリューションも提案されていた。既存の吸入器具では液滴が大きいため、薬が肺に到達する前にのどや気管に付着してしまうことも多いが、キヤノンでは2plから最小0.014pl(直径3μm)の極小噴霧が可能で、正確に肺に送り込めるという。また、ネットワークなどと連携することで、患者の投薬時刻や回数などを確実に把握できるなどの付加技術を提案していた。
経肺投薬装置のモックアップ | 薬に応じて、噴霧する薬剤の量(液滴サイズ)を変更できるという | |
インクジェットプリンターの技術を使った薬剤噴霧装置 |
幅60インチの超大判プリンター“Image PROGRAF“Y”” |
“仕事とキヤノン”のコーナーには、企業向け複合機“imageRUNNER(イメージランナー)”シリーズをデザイン一新した新型モデルが参考展示されたほか、最大1億5205万ピクセルの超特大解像度の空撮写真&天の川(ミルキーウェイ)の写真を出力する幅60インチの超大判プリンターなど、なかなか面白いものが展示されていた。
天の川、品川区の空撮写真。どちらもImage PROGRAF“Y”で出力したもの | 品川区の空撮写真にぐんぐん近づいて、会場の新高輪プリンスを撮影してみた。ここまで寄っても粒状感がない | |
インクジェットプリンターの技術を使った薬剤噴霧装置 |
従来の最大幅は44インチ(価格は59万円)だったが、新たに開発しているという幅60インチ対応の超大判プリンター“Image PROGRAF“Y””(仮称)は、使用するインク色や解像度、インク滴などの詳細スペックは未決定とのことだが、「このサイズで耐えられる最高発色を目指す」(担当説明員)とのこと。その隣に並べられた出力サンプルのうち“天の川”は、天体撮影向けに特化したデジタルカメラ『EOS 20Da』で撮影した672万ピクセルの画像を5×5(合計25枚)合成したもの。空撮写真は品川区のもので、よく近づいて見ると、会場である新高輪プリンスホテルなどもくっきりはっきり見えてしまう。
最初に書いた来場者の位置を確認するための装置がこれ。ゲートの壁面にあるセンサーユニットに入場登録時のIDカードをかざすと、自分がどこの会場に来たかが担当説明員にすぐ知らされる仕組みになっている | IDカードの裏側にあるアンテナ部とIC。構造としては一般的な非接触型ICカードと同様のようだ | |
来場者の経路観測ゲート |