プレス発表会の会場になった東京・蒲田の富士通ソリューションスクエアは、上から見ると扇形の建物で、普段はSE(システムエンジニア)の開発部隊が作業したり、クライアントとの打ち合わせなどに利用するという |
富士通フロンテック(株)と(株)富士通研究所は13日、2004年9月に試作機を発表したサービスロボット『enon(エノン、an exciting nova on network(ネットワークの躍動的な新星))』の実用機を開発し、本日から年度内にかけて一部顧客への限定販売を開始すると発表した。価格は組み込むオプションやソフトウェアによって異なるが、本体のみで600万円程度、ソフトウェアの組み込みは別途必要となる。enonは今月15日から慶応義塾大学で開催される学術研究会“第23回 日本ロボット学会学術講演会”で発表されるほか、11月30日から東京・有明の東京国際展示場(東京ビッグサイト)で開催される“2005 国際ロボット展”にも出展される。
今回販売される『enon』の実用機。ただし真紅のカラーリングは市販の3タイプとは別のカスタム仕様とのこと | 昨年発表された『enon』の試作機。頭部が丸くなり、全体に細身ですっきりシェイプアップしたことが分かる。これは導入される家庭/オフィスなどの通路や設置面積を考慮して、サイズを変更したものだという |
当日は、東京・蒲田の富士通(株) 富士通ソリューションスクエアにプレス関係者を集め、デモンストレーションを中心とした発表会も行なわれた。
enonは、昨年9月に発表された試作機からスリム化&軽量化したデザインに一新され、本体カラーはラベンダーブルー/シトラスイエロー/リリィホワイトの3色が用意される。主なスペックは以下のとおり。
ハードウェア
- サイズ
- 幅(肩幅)560×奥行き540×高さ1300mm
- 重量
- 約50kg
- 可動部(自由度)
- 頭部(2)、腕部(5)×2、手部(1)×2、駆動輪(2)
- 移動速度
- 時速最大3km/h
- センサー(初期状態)
- カメラ(6個)、超音波センサー(3個)、近距離センサー(3個)
- 通信機能
- 無線LAN(IEEE 802.11a/b/g)
- バッテリー
- ニッケル水素充電池(3時間駆動/3時間充電)
- 充電方式
- 無接点充電
ソフトウェア
- OS
- Windows XP Embedded
- 音声合成/音声認識
- 日本語対応
- 遠隔対話(無線LAN経由)
- オプション
- 持ち上げ(腕部)
- 片腕につき最大0.5kg(形状や素材によって制約あり)
- 荷物搭載
- 最大サイズ:幅270×奥行き320×高さ280mm/最大重量:10kg
- トレイ
- オプション
普段はSE(システムエンジニア)の開発部隊が作業したり、クライアントとの打ち合わせなどに利用するという、富士通ソリューションスクエアで行なわれたプレス発表会では、
- 来場者を認識して別の部屋に用意されたデモ会場まで案内する
- デモ会場の入り口で竹かごを持ち上げ、中のパンフレットを来場者に勧める
- 腹部の台座に乗せた荷物を指定された場所まで移動して置き台の場所を把握・位置調整し、荷物を置く(両腕で押し出して、滑らせるように移動するもので、持ち上げる動作は行なわなかった)という一連の動作をパソコンからの命令だけで自動実行する
といったデモが行なわれた。enonにはあらかじめ地図データ(部屋の間取り図)が入力されており、自分の位置と目的の場所を大まかに把握した状態でデモは始められた。カメラセンサーは人間でいう頭部に3方向のものを左右に設置して、広い視界と立体的な位置の検出を行なう。足元(スカートのような部分)には、超音波による障害物検知用のセンサーと、より近距離の物体を把握するセンサーが3方向(背面にも設置用マウントが用意され、最大6個まで増設可能)を確認しながら移動する。脚部は車輪による駆動で、段差は1cm程度なら越えられるとのこと。
現在は実用機の安全性を第三者機関、NPO(非営利活動)安全工学研究所に委託して安全鑑定を受けており、納品は11月以降を予定している。
ロボットで一番大事な場所、非常停止ボタン。前後の胸の部分に赤く大きなボタンで用意されている。押した後は矢印方向に回すことで、再起動できるという |