富士写真フイルム(株)と富士フイルムイメージング(株)は15日、東京・南青山のスパイラルホールで記者説明会を開催し、コンパクトデジタルカメラの新製品として3シリーズ4製品を発表した。価格はすべてオープンプライス。今回発表された製品と特徴、編集部による予想実売価格、発売時期は次のとおり。
- 『FinePix F10』
- ISO 1600の高感度撮影が可能なコンパクトデジタルカメラ
- 630万画素の“スーパーCCDハニカムV HR”&フジノン光学3倍ズームレンズ&高速高画質画像処理回路“リアルフォトエンジン”搭載
- 新開発のノイズ低減処理技術“ダブルノイズリダクション”採用
- ストロボなしでも明るく自然な絵作りが可能な高感度撮影機能“ナチュラルフォトモード”搭載
- 5万円前後/3月発売予定
- 『FinePix Z1』
- 独自開発の屈曲光学系3倍ズームレンズを内蔵するスリムコンパクトデジタルカメラ
- 有効512万画素の“スーパーCCDハニカムV HR”&高速高画質画像処理回路“リアルフォトエンジン”搭載
- モノコックフォルムを採用する薄型フルフラットボディーを実現
- 従来のアクリルパネルに比べて、スリキズに35倍の耐久性を持つ強化ガラスを採用した2.5インチ11万5000画素の液晶ディスプレーを装備
- ISO 800の高感度撮影に対応
- “ダブルノイズリダクション”“ナチュラルフォトモード”を搭載
- 4万5000円前後/5月発売予定
- 『FinePix A350』『FinePix A345』
- 入門者向けコンパクトデジタルカメラ
- 背面のボタン類の配置を改良して親指の移動のみで撮影向けの操作を実現
- 有効520万画素(A350)もしくは有効410万画素正方画素CCD&フジノン光学3倍ズームレンズ搭載
- シーンポジション(4種類)/モノラル音声付き動画(320×240ドット)/0.7秒間隔で5~69枚(A350)または3~18枚(A345)の連写などの撮影機能を搭載
- 3万円前後(A350)、2万円前後(A345)/3月発売予定
FinePix F10 | FinePix Z1 |
高感度&高画質が特徴の新スーパーCCDハニカムV HRと
画像処理回路“リアルフォトエンジン”を搭載
説明会には、富士写真フイルムの代表取締役専務執行役員電子映像事業部長の林 伸幸氏、執行役員電子映像事業部副事業部長の杉崎 力氏、電子映像事業部次長兼電子映像事業部営業部長の渡辺憲二氏、商品開発センター技術部長の竹村和彦氏、営業部技術グループ担当課長の平田正文氏、および富士フイルムイメージングの代表取締役社長 執行役員の田中康夫氏、取締役・専務執行役員営業本部長の坂根 徹氏、執行役員営業本部ファインピックス事業部長の國井宗司氏、営業本部マーケティングプランニング部長の黒澤英人氏らが出席し、FinePixシリーズ新製品の狙いや特徴などを説明した。
記者会見に出席した、富士写真フイルムの面々 | 同じく富士フイルムイメージングの面々 |
最初に壇上に立った林氏は、CIPA(有限責任中間法人カメラ映像機器工業会)の出荷予測数値などを挙げた上で、「昨年3月で世帯普及率が50%を超えたと言われるが、今後も買い替え/買い増し需要があり、引き続き成長すると考える。日本国内を見ると成長は鈍化傾向だが、東南アジアをはじめとした海外でまだまだ伸びる余地がある。富士写真フイルムとしては、特徴のある“富士らしい”デジタルカメラをこれからも市場に投入し、需要の喚起・拡大を図っていきたい」と現在のデジタルカメラ市場の動向をまとめた。
デジタルカメラの市場動向などを説明する林氏 |
その上で新製品について、「F10は、ISO 1600の高感度撮影を可能にするデジタルカメラ。さらに省電力設計と高容量バッテリーの搭載により撮影可能枚数500枚を実現する。また、(2004年7月発表のFine Pix)S3Proに開発・搭載した“リアルフォトエンジン”を搭載し、どのような場面でもユーザーが満足できる撮影を可能にし、長期間の旅行にも耐えるスタミナを手に入れた」「Z1は、F10と同じく第5世代のスーパーCCDハニカムHRとリアルフォトエンジンを搭載し、撮る喜びだけでなく持つ喜びも与える、軽量小型で薄型のスタイリッシュデジタルカメラ。モノコックボディーを採用し、強くて美しいフォルムを持つ。またユーザーの好みに合わせて選択できる4色のカラーバリエーションを用意している。これらは東京/ニューヨーク/ロサンゼルス/ロンドン/パリの各地でユーザー調査を行ない、その意向を踏まえてデザインやスペックを決定した」と紹介した。
デジタルカメラ市場の動向と分析 | デジタルカメラ市場のさらなる成長を目指す富士写真フイルムの戦略 |
さらに、「富士の独自性はグループ内にキーデバイス技術を持つこと。F10やZ1に搭載した新開発のフジノンレンズ、ハニカムCCD(スーパーCCDハニカムV)、リアルフォトエンジンなどが他社との差別化を図るキーテクノロジーと考える。これらを搭載した高性能な製品をタイミングよく提供するべく、グループが総力を挙げて取り組んでいく」と、同社の姿勢を示した。
新製品投入の背景を説明する渡辺氏 |
続いて渡辺氏が、それぞれの製品の特徴と開発に至る背景を説明した。同社が2004年に実施したアンケート結果を紹介しながら、
- 暗い場所での撮影画質に不満
- ブレやボケ、暗い写真は撮影後に削除することが多い
などユーザーの不満を紹介し、「カメラの本質である撮影の課題が未解決」であり、これを解消することが「買い替え/買い増し需要の拡大、ならびにパーソナル需要の喚起につながる」と語った。
ユーザーの不満の声をアンケート、分析したもの | 同じくユーザーのニーズをまとめて、製品づくりの参考にしたという |
スーパーCCDハニカムVとリアルフォトテクノロジーの詳細を説明する竹村氏 |
続いて竹村氏が、スーパーCCDハニカムVとリアルフォトテクノロジーの詳細について説明した。スーパーCCDハニカムVは、画素の高密度化を進めるとともに電極構造を改良(薄型化)することにより、RGBフィルターと撮像素子の距離を縮めて到達する光量を増やしたもの。さらに、撮像素子についても感度を上げる、暗部ノイズを下げる、飽和レベルを上げるという3つの改良を施した。これによりISO 1600相当の高感度撮影を実現。室内や夜景のスナップ撮影が明るくきれいに写るほか、暗いシーンでもシャッター速度を速めることができるため、被写体ブレが少ない、ストロボの到達距離を長くとることができる(広角側で6.5m、望遠側で4.0m)、ストロボ発光時の背景を明るく写せる、被写界深度を上げることができる、などのメリットがあるという。
スーパーCCDハニカムVによる撮影可能(撮影失敗が少ない)領域の拡大を示す図 | ダブルノイズリダクションによるノイズ低減処理の例 | 従来方式のノイズリダクションとの比較 |
ISO 1600の高感度撮影は、画素混合方式の従来モデル(スーパーCCDハニカムIV SR)でも実現していたが、画質の面でユーザーに受け入れられなかった。これは、従来のノイズ処理が“高周波成分の除去”(細かいノイズを周囲の色になじませて減らす方式)のみで行なっていたため、斑模様の大きなノイズが残ってしまい画質に悪影響を及ぼしていた。そこで、新たに大きなノイズと細かいノイズをバランスよく除去する“ダブルノイズリダクション”方式を採用し、解像感を残しながらノイズ成分を取り去る技術を開発・搭載したという。
スーパーCCDハニカムVの改良点(スーパーCCDハニカムIVとの比較) | 光の取り込みも効率を改善したという |