カード型情報端末『Aimulet GH』の使用イメージ。カードを耳に当て、赤外線発振部に向けると、音声ガイドが流れる |
独立行政法人 産業総合技術研究所と東京特殊電線(株)は31日、3月25日より開催される“愛・地球博 EXPO 2005 AICHI JAPAN”のテーマ館“グローバルハウス”にて、展示会向け統合情報支援システムを提供すると発表した。“Aimulet GH(アイミュレット ジーエイチ)”(※1)と呼ばれるカード型情報端末を来館者に貸し出し、展示物の音声ガイド機能と来場者の入退館管理や移動の解析などを行ない、展示会運営を支援する。
※1 お守りを意味するAmuletと、情報を意味するiを組み合わせた造語愛・地球博のテーマ館“グローバルハウス”のイメージ。“地球と人類の過去、現在、未来”と“人間の想像力”をテーマに、さまざまな映像や展示品、マンモスの冷凍標本などが展示される。Aimulet GHによる音声ガイドは、館内の“プロローグ ゾーン”“グローバル ストリート”“グローバル ショーケース”などで利用できる |
Aimulet GHはクレジットカード大の携帯情報端末で、厚さは5mmで、重さ28g(縦横サイズは非公開)である。ボタンやスイッチの類は一切ない。Aimulet GHを渡された来館者は、展示物の前などでカード右下にあるスピーカー部分を耳に当て、カード表面を展示物の上(高さ3.5mほど)に設置された赤外線発振部に向けると、赤外線(周波数は非公開)で伝送された音声によるガイドを聞くことができる。音声ガイドは日本語と英語が用意され、貸し出される端末によって、どちらの言語でガイドを聞けるかが決まっている。赤外線の受信範囲は、3.5mの高さにある発振部から2mの距離で、縦50cm、横3m程度の範囲がある。範囲がほどほどに狭いので、展示物ごとに異なるガイドを提供できるのは光無線ならではの利点と言えよう。
さらにAimulet GH内には、東京特殊電線が開発したアクティブ型無線ICタグシステム“MEGRAS(メグラス)”の無線ICタグ機能が内蔵されている。Aimulet GHは会場の天井各所に取り付けられたレシーバーと1秒間隔で通信することで、来館者がどこにいるのか(1~10mの範囲)、どう移動しているのかを把握できる。無線変調方式はOOK(On Off Keying)で、周波数303.825MHzを使用する。人の動きの解析や赤外線によるコンテンツ配信は、産総研の開発した基盤ソフトウェア“CONSORTS(コンソーツ)”により行なわれる。これによって、どの展示物に人が集まっているのかや、来館者の流れを分析しての混雑緩和、緊急時の避難誘導や救援などに役立つとしてしている。来場者の個人情報などは入力されないので、プライバシー侵害の心配もない。
会場に設置されるのと同じレシーバー。レシーバーはLANに接続できるため、管理用のパソコンと簡単にネットワークを組めるほか、増設も容易だ | 統合情報支援システムの構成図。Aimulet GHは無線ICタグで位置情報を送り、赤外線で情報を受け取る |
統合情報支援システム自体は博覧会向けのワンオフなシステムではなく、他の公共空間にも適用できるだけの拡張性や柔軟性を備えている。大規模イベントだけでなく、公共施設や企業内での利用など、使い道はたくさん考えられるだろう。